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人材不足解消の一手、ニューロマイノリティの登用

人材不足解消の一手、ニューロマイノリティの登用

IT人材の不足に悩む企業が世界的に多いなか、リクルートメントのエキスパートであるヘイズはニューロマイノリティ人材への機会の提供がその解消の一手になると考えています。
 
注意欠如多動性障害(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)、失読症、行動不全、算数障害などの症状を持つ人々は「ニューロマイノリティ(神経学的少数派)」と総称されています。現状ではニューロマイノリティの人々は、採用において過小評価される傾向にあります。ニューロマイノリティの人々は、社交的な活動や一部の仕事への対応が難しいと思われがちですが、「ニューロダイバージェント(神経発達が多様な)」な人材ならではの強みや長所があります。人材不足に悩む企業にとって、ニューロマイノリティがアクセスしやすい環境をつくることが、人材不足緩和の一手となる可能性があります。
 
ヘイズ・テクノロジーのグローバル・ヘッドを務めるジェームズ・ミリガンは、ニューロマイノリティ人材の長所について、次のように述べています。「IT業界ではニューロマイノリティ人材の採用を進め、そのメリットを実感し始めています。例えば、自閉症の人は課題に対して異なる視点からアプローチし、独創性が極めて高い方法で解決することができます。特に技術的な人材不足に関して、ニューロダイバージェントな人材がもたらすメリットが多数あるといえます」。
 
ミリガンは「ニューロマイノリティ人材は、企業に多くのメリットをもたらす一方で、従来の採用方法では登用のチャンスを与えるに至っていません。従来の採用プロセスは、ニューロマイノリティ人材の特性を踏まえて設計されておらず、ニューロマイノリティ人材がはじかれやすくなっています」と語ります。
 
今回は、ニューロマイノリティ人材が採用プロセスで直面するかもしれない問題と、この解決策を考えていきます。
 

1. 面接での問題 

従来の面接試験は、社会的な常識や非言語コミュニケーションを理解していることを前提に設計されており、ニューロマイノリティの候補者は苦戦する傾向にあります。しかし、例えば、複数の面接官と候補者一人で行われるパネル面接の代わりに1対1の面接を連続して行うなど、さまざまな代替策を検討することはできます。
 
「ニューロマイノリティ人材にとって、面接が障壁となる可能性は否定できません。それがわかっているならば、困難を取り除くステップを用意できます。たとえば、面接前に質問事項を知らせておけば、実体験などの例を詳しく準備しておくことができ、面接官にとっても適性をより詳しく知ることができるというお互いにメリットのある機会となります。単純な調整かも知れませんが、マルチタスクがあまり得意ではないニューロマイノリティ人材にとっては、有効な方法です」とミリガンは語ります。
 

2. 面接方法を柔軟に変更する 

通常の面接で出される質問は、ニューロマイノリティ人材にとって回答が難しい場合があります。漠然とした質問は避け、IT職と関連していることが明らかな質問に絞る等、質問の内容を変更して回答しやすくなるように工夫することで、対応できます。
 
ミリガンは、次のように助言します。「『一番自信を持っていることは?』ではなく『この数か月間で解決することができたIT関連のトラブルは?』と具体的に聞いてみたり、『これまでの仕事について説明してください』と尋ねる代わりに、職務履歴書の中から具体的なトピックを取り上げて説明を求めたりするなど、ニューロマイノリティ人材が回答しやすくなるように、質問の仕方を変えることができます」。
 

3. 評価方法を変えてみる 

面接の代わりに、試用期間や短期のインターンシップ、実技評価の期間の設定なども検討できます。ニューロマイノリティ人材にとって、自分の能力や、特定の職務に関する自分のパフォーマンスを証明する良いチャンスになります。一方、心理テストでは、ニューロマイノリティに有利なスコアが出る傾向が。真にマッチした人材か否かを判断するためには、心理テストよりも、前職での経験を実例を挙げて説明してもらう方が良いかもしれません。
 
ミリガンは、次のように語ります。「採用手法に関係なく、肝心なのは採用プロセスにおいて何を得ようとしているかを明確にしておくことです。従来の標準的な採用プロセスが、最良の人材獲得につながるとは限りません。募集中のポジションに必要な条件は何か、相手は何かのスキルをどのように測るかを考え、目的に関係しない障壁は取り除くべきです」。
 

4. 面接準備をサポートする 

選考プロセスが固まったら、ニューロマイノリティ人材にそのプロセスについての説明や指示を明確に行います。
 
「コーディングの試験を受験してもらいたければ、面接の一部としてこの試験が行われると通知しておき、可能であれば面接前にコーディング環境についても説明しておきます。また、面接や採用に際する面接官の準備を手助けするために、ニューロダイバーシティの専門家に相談するのも手。あらかじめ対応についてすり合わせをしておかないと、意識無意識にかかわらず、ニューロマイノリティ人材の適正を誤って判断してしまう可能性もあるためです」とミリガンは述べています。
 

5. 求人広告の書き方を工夫する 

求人広告では、一部の人にしか通じない業界用語などを避け、正確で明確な言葉を使用することが大切。ダイバーシティ&インクルージョンに関する取り組みにも触れ、ニューロマイノリティ人材が働きやすくなるよう環境を調整する余地があることも伝えます。
 
ミリガンはこれについて「求人広告には、募集する仕事に直接関係のない一般的なスキルを記入するのではなく、その職務で真に必要とするスキルや特性を記載します。不要な条件を盛り込むことで、有望な候補者が応募を断念する可能性もあります」と語ります。
 
ニューロマイノリティ人材の採用は、他の従業員へも良い刺激となります。また、IT人材の不足がかつてないほど深刻化している今、これまで見逃されてきた才能ある人材に機会を提供することにもなります。
 
ミリガンは、最後にこのように締めくくりました。「ニューロマイノリティ人材の採用を検討する際は、まずは専門家と協力することをお勧めします。たとえば、このような人材採用活動に知見のある転職エージェントはその選択肢のひとつです。さまざまな人材の採用の登用により、ニューロダイバーシティな職場の実現に近づきます」。
 
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