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ダイバーシティの推進がITスキル格差を解決する

ダイバーシティの推進がITスキル格差を解決する

新型コロナウイルスの影響によって、IT業界におけるスキル格差は、これまでにないほど深刻になってきています。企業は、今までにないスピードでデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させており、今後2年間で10年分の変化が起こると言われています。そのような急激な変化が、スキル格差をより深刻なものにしているのです。必要なスキルを持つ人材は限られており、企業はこの問題に対処するためにより革新的な方法を取る必要があります。それは、既存の人材を再教育するか、これまでは目を向けてこなかった人材層にアプローチをしていくかのどちらかです。
 

D&Iの推進

多くのIT企業は、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン=多様性、包括性)や従業員の帰属意識に関しても取り組むべき課題を数多く持っています。労働者全体に占める割合が低いグループ(精神・発達障害のある人や少数民族など)の中には、IT業界でも極めて優秀な人たちがいますが、明らかな格差が存在しています。
 
社会的流動性(社会階層の変化。例えば、低所得層が中所得以上に移行するなど)の観点から見ると、これまでIT業界で働いてきた人々のほとんどは、IT分野の学位を持っています。教育を受けず、学位を取得していない人たちがIT業界に入るルートは、これまでと同じようにはありませんでした。
 
多様な人材がそろっていないと、さまざまな視点からものごとを見ることができません。そのため、彼らが見出す解決策やイノベーションは、経営者や上層部など一部の代表者のために作られることが多いのです。その解決策は、代表者以外の人々には通用しないかもしれません。これは、どのようなビジネスにとっても大きな問題です。また、市場全体を閉め出すことになりかねないので、機会損失にもつながります。
 
しかし、ポジティブな面もあります。現在、新しい技術を身につけたい人は、オンラインや無料のリソースを利用することができます。Salesforceのような企業は、自社の学習プログラムを個人向けに無償で提供しており、こうしたルートで入ってきた人材を採用しているのです。
 
また、この問題を解決するのは企業だけの責任ではありません。政府や教育セクターが、人材育成のために提供している支援にも目を向ける必要があります。英国では、職業実習賦課金制度(年間人件費約1億5000万円を超える企業から人件費の0.5%相当額を徴収し、職業実習にかかる企業の費用に利用する制度)があり、政府が職業実習制度の活用を支援しています。
 
慈善団体もその一翼を担っています。LTSB(Leadership Through Sport & Business)は、社会的流動性を高めることを目指し、恵まれない環境にある優秀な若者が活躍できるよう支援する慈善団体です。 LTSBの「デジタル・テクノロジープログラム」では、イングランドやスコットランドで、多くの若者がエントリーレベルのコースから実習に参加しながら学位取得できるものまで、さまざまなプログラムに参加しています。
 
LTSBは、一般的にダイバーシティに問題があることから、スキル不足やBAME(黒人、アジア人、少数民族)コミュニティの代表者不足に悩むセクターを主にサポートしてきました。これまで機会を奪われてきた若者を支援することで、彼らは自分たちにふさわしい人生を歩むチャンスを得ることができます。
 

採用戦略・方針の見直し

IT企業でダイバーシティを改善しようとする場合、まず考えるべきは求人広告と採用プロセスです。求人広告が幅広い人材を対象としたものになっているか考えてみてください。その仕事に必要ではない要件が含まれたりしていませんか。
 
また、求人に使用する言葉や表現についても見直してみてください。一部の求職者が応募をためらうような表現になっていませんか。例えば、「Expert(専門家)」、「World-class(世界でも通用する)」、「Superior(優れた)」といった言葉を過度に使うと、女性の応募者が減るという調査結果があります。
 
そして、実際に応募が来て評価をする段階になったら、必要な能力を持っているのか、それとも必要なスキルや能力を今後身につけていくことができるのか考えてみてください。そのときの能力だけで評価をすれば、アプローチできる人材は少なくなります。一方、ポテンシャルを持った人材を採用できた場合、日々変化するITの需要にも適応し、貢献してくれるでしょう。
 
多様な人材を呼び込むことができ始めたら、誰もが働きやすい職場にするために社内でどのようなことをしていくべきか、ということも検討する必要があります。安心してコミュニケーションができる場所を提供し、彼らが自分らしくいられるようサポートしましょう。自分の意見に耳を傾けてもらい、歓迎されていると感じることができれば、その人材が定着し、活躍できる可能性は高くなります。
 

架け橋となり、障壁を取り除く

長期的には、企業が慈善団体や教育機関、政府などと連携し、長期的なパイプラインを構築することが大きなメリットになります。リーダーは、このような組織や団体とつながりを作ることで、個人レベルでこのような問題に対して支援することができます。私は、10代の女性にSTEM(科学、技術、工学、数学)分野の実地体験の機会を提供し、資格や仕事を得るための支援を行う団体「Teen-Turn」の理事長を務めています。男女の多様性を高めることの重要性を信じていますが、実は社会的流動性の向上のほうに、より強い関心を持っています。リーダーは自分の強みを発揮し、関心のある組織とのつながりを構築すべきです。
 
企業は、「Teen-Turn」のような団体と協力できるような体制を作っていく必要があります。多国籍企業の中には、外部組織との協働を妨げるような規定を設けているところもあります。障壁を取り除き、ある程度の流動性を持たせることが重要なのです。もし、このような方法で誰かを受け入れる前に、何ページものコンプライアンス規定を完成させなければならないとしたら、成功にはつながらないでしょう。
 
この記事は、Forbes(英語のみ)のウェブサイトに掲載されたものです。ジェームズ・ミリガンは、Forbesの人事評議会のメンバーです。
 
他にも、IT業界でのキャリアや採用活動に役立つ情報を紹介しています。こちらの記事もぜひご覧ください。
 
 

著者

ジェームズ・ミリガン
ヘイズ・テクノロジー、Global Head
2020年に入社し、ヘイズ・テクノロジーのGlobal Headを務めています。ヘイズ・テクノロジーにおける国際的な戦略立案を担当。

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