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未来に必要な世界共通の「言語」、コーディング

未来に必要な世界共通の「言語」、コーディング

人類は文明を築いた早い時期から、より良いコミュニケーションを求めて言語を形成してきました。言語はエジプトのヒエログリフ、古代ローマの古典ラテン語から始まり、進化を遂げながら現在使われている、分かりやすい言葉に発展してきたのです。そして21世紀に突入した今では、数字のゼロ(0)や1、角カッコ記号([ ])、アスタリスクマーク(*)、アンパサンド(&)や感嘆符(!)といった数字や記号、文字なども頻繁に使われるようになりました。しかしこれらは一体、何語なのでしょうか?それは、「コーディング」と呼ばれる言語です。

コーディングはあなたの身の回りに

皆さんは今、このブログをどのデバイスからご覧になっていますか。スマートフォン、タブレット、それともパソコンからでしょうか?皆さんは今朝、会社のパソコンにログインしましたか?社内に入るときに、何らかのセキュリティシステムを通過しましたか?同僚やお客様との会話に、オンライン会議を活用することはありますか?これらの質問のうち、一つでも該当するものがあれば、皆さんは何らかの形で毎日コーディングを使用していることになります。私たちが日常的に使用している機器や機械の多くはコーディングを活用していますし、デジタル化が進む現在では、コーディングがなければ仕事が成立しない人たちが大半を占めています。

ビジネス以外でも、コーディングは私たちの日常生活に広く変化をもたらしています。IBM社は、地震や噴火、山火事など自然災害に対する技術的支援を目指して、2019年、開発者を対象としたイベント、「Call for Code」を開催しました。この中でIBM社は、複雑な現実世界の問題の解決に向けて、オープンソース環境でコーディングを活用しました。コーディングは決して未来のビジネスだけのものではありません。私たちが暮らす日常生活の中でも、活かされるものなのです。

膨大な数に上るコーディング言語、その違いは?

コーディングの最も基本的なコンセプトは、理論的な行動をコンピュータが理解できる言語に置き換えることです。これが出来れば、私たちはアプリケーションを動かしたり、ソフトウェアを作ったりウェブサイトを立ち上げたり、ビデオゲームを楽しんだりすることが可能です。コーディングはいわば、機械とコミュニケーションするための言語や言葉であると考えても良いでしょう。人間の言語に例えると、それぞれのコーディング言語は「方言」のようなものです。コンピュータとコミュニケーションするために使用されることに変わりはありません。表現方法や単語、文章に少しの違いがあるだけなのです。

コーディング言語は、オペレーティングシステム、プラットフォーム、プログラミング作法、想定使用方法ごとに異なる設計がなされます。著名なのものとしては、JavaScript、Python、SQL、PHP、Ruby、Java、C言語が挙げられますが、この他にもRust、Swift、Hackなど新規開発された言語も含めると、その数は膨大なものになります。

コーディング言語の教育の重要性は、外国語教育に匹敵

ITやネットワーキングビジネスのグローバル・リーダーであるCisco社が発表している「Annual Internet Reportによると、(スマートフォンやタブレット、スマートウォッチなどの)コネクテッドデバイスの数は、2023年までに人口の3倍超に達します。これに鑑みると、地球上でここまで幅広く使用されているデバイスに使用される言語を理解しようとすることは、きわめて合理的なことなのです。この言語を理解できれば、デバイスが生み出すものを効率的につなげ、デバイスに的確な指示を出し、改善していくことが可能になります。

先日、私はある会議に出席しました。そこで、ある参加者から、「これから子供たちに学ばせる言語として、何がお勧めですか」との質問が出されました。この質問に対し、経済アナリストのピッパ・マルムグレン氏が回答したのが、「コーディング」でした。私たちは既に、コーディング言語をスペイン語やフランス語、英語などの外国語同様、学校教育の必修科目として検討すべき時期に来ているのです。アップルのCEOであるティム・クック氏も同様の意見を持っているようです。あるインタビューの中で、同氏は次のように答えています。「もし私がフランスの学校に通う10歳だったら、英語よりもコーディングを学ぶ方が大切だ、と思っていたでしょう。英語を学ぶな、と言っているのではありません。英語を習得すれば、70億人の人々とコミュニケートすることが出来るのですから。しかし、コーディングは、(世界に通じる共通言語ですから)世界中の公立学校で必修科目にすべきでしょう」。

非営利団体である Code.orgもクック氏の意見に賛同しています。Code.orgは、学校におけるコンピュータサイエンス活用の強化や、女性やマイノリティのコンピュータ教育への参加拡大を目指しており、コーディングが標準的なカリキュラムとして普及するための活動に取り組んでいます。また、1年に一度、「Hour of Code」という1時間ほどのキャンペーンを全世界で展開し、コーディングの理解深化に向けたイベントを行っています。同団体によると、世界各国の学生のうち、15%がこのキャンペーンに参加しています。

コーディングを最優先で学ばなければならないのは、これから社会に出る若者だけではありません。私たち全員です。ウェブサイトの編集をしているフリーランサー、複雑な予算モデルに頭を悩ませている経理担当者など、コーディングは働く私たちすべてに必要な言語であり、その効果を知ることで私たちは自分の仕事をよりよく改善してくことが出来るのです。

企業の中には、従業員のスキルアップやスキル不足解消策の一環として、個人のレベルや職務などに併せたトレーニングを提供したり、生涯学習を奨励したりするなど、既に先手を打った取り組みをしているところもあります。若手のコーディング技術者の採用強化や、新卒者・研修者のプログラムにスクールの講義やプログラムの実施を組み込むなどの採用・育成戦略を展開する企業もあります。学校での講演会やコーディングマラソン(開発者が決められた時間の中でアプリの開発を競うイベント)、職場体験などの機会を通して次世代の人材を激励したり、刺激を与えたりする活動も見られます。これらから伺われるのは、企業が積極的に従業員のスキルアップに取り組むことが大切であるということです。彼らから雇用が安定すると感謝してもらえるからではありません。こうした従業員が現在も将来も、あなたのチームにとって非常に大きな価値を発揮するからです。

コーディングを学んでテクノロジーと共存する

コーディングは、技術者や数学者など一部の人だけが駆使出来るスキルと考えがちかもしれませんが、そうではありません。ビジネスの態様が変化し自動化が進行すると、コーディングは皆さんの将来のキャリアにも役立つものとなって来ます。世界的なコンサルティンググループ、McKinseyが発表したレポートよると、AIとオートメーションはビジネスや職場を大きく変質させるでしょう。これまで人間が反復的に行ってきた作業は、AIとオートメーションに取って代わられ、結果的に衰退する職業や仕事の性質が変化する職業も出てきます。しかし、その一方で、新たに伸びてくる職業も出てきます。

同レポートでは、(テクノロジーによって新たな仕事が創出されたり、従来の仕事の質が変化するため)仕事の量は十分に確保されるものの、労働者は新しいスキルを習得してこれらの変化に適応していかなければならない、と報告しています。機械の性能が一段と向上するため、私たちはこれと共存していく方法を学ばなければならないのです。こうした機械を制御するために、コーディングの習得は最適の方法です。また、カスタマーサービスなど、本来は人間が行う業務についても、管理の仕事や反復的な作業であれば、チャットボックスやロボットが対応出来るようになるでしょう(その分、人間はより人間にしか出来ない仕事に集中することが出来ます)。しかし、こうしたテクノロジーには、コードを調整しながら継続的に改善してくれるコード記述者が必要なのです。

つまり、テクノロジーが台頭したとしても、人間の仕事がなくなるわけではありません。私たちは、5年、10年、15年後に、これらのテクノロジーが現在のスキルと共にどのような役割を果たしているのかを考えて、新しいスキルを習得すればいいのです。自分の仕事がどのように変化するのか予測できれば、必要なスキルを習得し仕事を続けていくことが出来るでしょう。

職業に関わらずコーディングが必要な理由

コンサルティンググループのPwCが実施した調査によると、労働者の74%は、将来も仕事を続けていくために、新しいスキルの習得やリスキルに前向きです。未来の言語と言われるコーディングを習得すれば、将来の雇用に繋がります。現在の仕事に関わらず、こうしたスキルは有効に活用することができるのです。コンピューティング教育を推進している Oracle Academyは、調査報告書の中で、2015年に米国で募集された求人情報のうち、700万件超がコーディングスキルを重視するものであったと伝えています。プログラミング関連の仕事は、求人市場全体の1.5倍の速度で拡大しており、コーディングのスキルに需要が集まっていることは鮮明です。

ビジネスの種類や規模を問わず、コーディングスキルへのニーズは非常に高く、フリーランスや契約社員として働く皆さんにとっては、生涯に渡り役立つスキルであると言えるでしょう。習得すれば、自らウェブサイトを制作できるだけでなく、仕事を自動化することでその仕事に本来必要な時間を大幅に短縮することができます。コーディングさえ正確に実行されていれば、データの入力や顧客からの簡単な質問へについては、ソフトウェアを使って代替することも可能です。ベーシックなコーディング知識だけでも、十分に役立ちます。小さな変更や修正ならばITの専門家任せにせず、自分でスキルを身に着けて、次にすべき仕事に素早く、効果的に移行しませんか?

コーディングを学習するならば、まさに今が最適です。従来は、3年程度のコースを専攻する必要がありましたが、現在はインターネットに無料のリソースが豊富に揃っており、誰でも勉強を開始することができます。レベルアップを望む場合は、Le Wagon社が提供しているサービスも参考にしてみて下さい。同社は、入門レベルから最短で3ヶ月ほどで複数のコーディングにチャレンジすることができます。

会社経営者であれ企業で働く社員であれ、コーディングを学ぶことで身に着けたスキルは、あなたの将来に役立ちます。今新しい言語を身に着けたいとお考えならば、ぜひコーディングを習得しましょう。そうすれば、世界共通の言語でコミュニケーションが可能になります。

著者

スティーブ・ウェストン
ヘイズ チーフ・インフォメーション・オフィサー
ウェストンは、2008年1月にチーフ・インフォメーション・オフィサー(最高情報責任者)としてヘイズに入社。1977年に自動車メーカーでキャリアをスタートさせたウェストンは、1987年に金融サービス業に転身します。1997年にはXansa plcでITサービスの仕事を開始、2007年12月までUK Managing Director(英国のマネージング・ディレクター)の職を務めた。ウェストンは現在、ヘイズにおいて最高情報責任者を始め様々な役職を担っている。

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