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サステナビリティ達成のために社内で推進すべき3ステップ

サステナビリティ達成のために社内で推進すべき3ステップ

 

サステナビリティ(持続可能性)に関する目標を掲げ、達成へと努力している企業が増えています。サステナビリティの実現に向けて企業が実行できる選択肢も同様に増加。ビジネスリーダーは気候変動などの問題へ取り組む責任を一層請け負っています。同時に、社員や関係者を巻き込み、果たすべき役割を理解・遂行させることも、リーダーの責務として求められています。
 
サステナビリティの目標を達成するためには、従業員の意欲を高め、彼らの力や知識を活用することが極めて重要。サステナビリティの実現は、社員一人一人にかかっています。では、実際にどのように従業員を巻き込んでいけばよいのでしょうか?
 

従業員の力でサステナビリティを実現するために

1) コロナ収束後の行動様式を確立する

新型コロナウィルスによる行動規制も徐々に緩和されつつあり、オフィスへの通勤を再開した企業も見受けられます。電車や飛行機、自動車の利用も増える見込みですが、これらの移動は環境に悪影響を及ぼすリスクがあります。
 
不必要な移動を発生させないために、オンライン会議や代替手段をまず検討してみることが大切です。ヘイズのCEO、アリスター・コックスは昨年のブログ(英語のみ)にて、2026年までにヘイズは飛行機での移動を40%削減する方針を明らかにしました。ヘイズUK・アイルランドでは、社用車を電気自動車やハイブリッド自動車に切り換え始め、ヘイズ・ドイツでは従業員に持続可能な交通手段を検索できるアプリを提供し(英語のみ)、最適な移動手段を選択できるよう支援しています。
 
また、ハイブリッドワークの導入も移動の抑制に効果があるモデルとして期待されています。ハイブリッドワークでは、社員自身が出勤するかリモートで働くかを選択できるメリットがあります。しかし一方では、電力消費の増加という新たな課題も発生。コロナ禍以前では、日中の電力消費は主にオフィスに限られていましたが、現在ではオフィスと住宅の両方で発生しています。
 
住宅での電力消費はコントロールできないため、サステナビリティの観点からできることは、エネルギー消費の節約や対策についての社員への啓蒙。ヘイズでは、デスクトップコンピューターからエネルギー効率の良いラップトップに切り換えました。ハードウェアなどの機器は、リサイクルや寄付、安全な方法での処分ほか、学生への提供も行っています。
 

2) 従業員のエンゲージメントを高める

サステナビリティへの対応に戸惑う従業員もいるかもしれません。しかし、複数の調査では、環境に対するビジネスパーソンの考え方は変化していると明らかになっています。2022年、ヘイズはLinkedInを通してこれに関する意識調査を実施(英語のみ)。その結果、回答者の3分の2が、企業のサステナビリティへの意識や活動を、入社を決める要因として重視していることが明らかになったのです。その傾向はとくに、次世代において顕著に。また、世界的なコンサルティング企業、デロイト・グループがミレニアル世代やZ世代など若い層を調査対象として毎年発行している「Global Millennial and Gen Z Survey」 (英語のみ)では、Z世代の関心事の上位が気候変動と失業率だと明らかに。LinkedInは最新のレポートで(英語のみ)、2015年以降、ミレニアル世代のグリーンスキル(CO2削減や環境保全に貢献する仕事で活かすことのできるスキル)が毎年13%ずつ向上していると報告しています。
 
環境配慮をしているように装う「グリーンウォッシング」や見せかけの取り組みを従業員は見抜きます(英語のみ)。ごまかしの対応は従業員の不信感を生み、離職につながるリスクがあります。グリーンスキルを持つ従業員は本来、ビジネスを成長させサステナビリティ目標を達成する屋台骨となるはずのところ、失望して離れていってしまうのです。
 

3) 従業員のグリーンスキルを育成する

近年ではますます、ESGやサステナビリティの実務経験があり、急速に拡大するグリーン経済に対応できるスキルのある人材を求める企業が増えています。LinkedInの報告書によると(英語のみ)、グリーンスキルを採用条件に掲げた求人情報は、2015年以降毎年8%ずつ増加。しかし、条件に見合う人材の増加率は年間で6%に過ぎません。同報告書は、「今求められているグリーンスキルは、これまでの“グリーン”な業務ではない」と結論づけています。つまり、これまでのスキルのみでは取り残される恐れが見てとれるのです。
 
そこで重要になるのが、従業員のスキルアップ。英国のシンクタンク、Green Alliance社(英語のみ)は、「グリーンスキルを持っている人材は、しばしばその業界での経験が不足している場合が多い。このため、技術や材料の開発については、その産業で長い経験を持つ人材の力が必要になる」と述べています。企業は、サステナビリティ関連の仕事に従事し始めた社員に対して、何らかの支援を行うべきであるとわかります。意欲ある社員や新たな取り組みへの投資は、社員のモチベーションやロイヤリティを高められるため、サステナビリティの発展を推進する従業員や環境をサポートし、必要なリソースを提供することは企業の命題です。
 
また、応用可能なスキルや、他業界でのグリーンスキル活用経験のある人材の採用も、検討する価値があります。LinkedInによると、サステナブルファッションなど成長産業で働いたことのある人々が、他の業界へ転職し始めている(英語のみ)と伝えています。
 

正しいことをする

従業員をサステナビリティ遂行へ巻き込むには、お金も時間もかかります。しかし、低炭素経済への移行がもたらす産物に気づくきっかけにもなります。各企業や個人の努力により、パリ協定で定められた目標―21世紀半ばまでに世界全体で「ネットゼロ」を実現し、気温上昇を産業革命前から1.5℃以内に抑えるーを達成できれば、これらの取り組みの価値があったと言えます。
 
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著者

フィオナ・プレイス
ヘイズ・グループ、グループ・ヘッド・オブ・サステナビリティ
14年以上にわたり、上場・非上場企業に対し、ESGとサステナビリティ分野に従事。主な関心は、ネット・ゼロ、責任ある調達、人権など。ヘイズ入社前は、Elevate GlobalやAnthesisでサステナビリティに関するデューデリジェンスサービスの拡大を担当。物品・サービス分野の企業に対し、サステナビリティ実現に向けたサポートを実施。また、アフリカやアジアにおいて、NGOの代表として企業責任プログラムに携わった経験も有する。

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