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日本における金融業界のコンプライアンス採用動向

日本における金融業界のコンプライアンス採用動向

日本の金融業界では、コンプライアンス職をどのように採用しているのか? 

「コンプライアンス採用=コストがかかる、ではなく『コスト削減策』として考えましょう。」 
 
海外企業がアジアの成長の可能性を見込み投資が増加している中、金融業界でよく耳にするこのフレーズがより一層現実味を帯びています。その背景にはデジタル経済の発展から利益を搾取しようとする団体による、複雑化し続ける金融犯罪の存在があります。 
 
これを受け各国の政府規制当局は、資本市場と金融システムの信頼と安定性を維持するため、銀行や金融機関に対するコンプライアンス基準の要求をさらに強めています。コンプライアンス管理にはリソースが必要ですが、情報漏えいの後処理や、サービスに対する評判や信頼度低下への対処に比べれば、コストははるかに低いといえるでしょう。 
 
「2024年ヘイズアジア給与ガイド」では、金融業界の動向を幅広くご紹介いたしました。今回は日本におけるコンプライアンスの動向について、ヘイズジャパンのビジネス・ディレクターを務めるセヘナ・ホンより、さらに詳しい洞察を得ました。 
 
 

目次

•    金融犯罪コンプライアンスに携われる人材は限られている
•    サードパーティーリスク管理は極めて専門的な業務
•    自動化がコンプライアンス業務を合理化する
•    コンプライアンス人材は何を求めているのか?
•    企業はどのようにコンプライアンス人材を惹きつけ、維持できるか?
•    金融業界における最も需要の高いコンプライアンス関連の職種

金融犯罪コンプライアンスに携われる人材は限られている

現在金融機関は多くのリスクに直面しています。マネーロンダリング、テロ資金調達、サイバー犯罪、詐欺などは、個人やグループによって行われている一般的な犯罪の一種です。 
 
この状況を受け、当局は関連企業に対して一層厳格なコンプライアンス要件を挙げており、コンプライアンス義務を果たそうとする企業は、より一層コンプライアンス部門への依存を高めています。 
 
金融犯罪コンプライアンス(FCC)が専門職として成長できる魅力的な分野だと考える候補者にとって、こうした需要の高まりは強い関心の的です。多くの候補者がこの役割に必要な知識とスキルを身につけるため、ACAMS認定資格試験を受けるようになりました。 
 
しかし、候補者からの高い人気がある職種にも関わらず、企業はニーズに合った人材確保に苦戦し続けています。FCCの候補者は、利害関係者や当局と効果的なコミュニケーションを取るために、英語と日本語の両方が堪能であることが求められます。これは海外で必要とされる規制業務を英語で円滑に進める必要がある日本人候補者にも、日本の規制当局とのコミュニケーション能力が不足しがちな外国人候補者にも当てはまることです。 


サードパーティーリスク管理は極めて専門的な業務

サードパーティリスク管理(TPRM)は、技術、決済、データ管理などのソリューションを外部へ委託している金融機関にとって特に重要なファクターです。委託先への依存は、企業の直接的な業務管理体制を低下させ、消費者との関係に新たなリスクを持ち込むことになります。 
 
また同時に、規制当局は金融機関に対し、サードパーティーリスクを管理するよう強い要求を示しています。KPMGの報告書によると、これは過去3年間で増加している第三者によるインシデントによって、様々な企業が混乱や金銭的損失、風評被害に直面していることが少なからず影響しています。 
 
企業には金融犯罪やインシデントのリスクを最小限に抑え、消費者データのセキュリティーとプライバシーを確保する責任があります。しかし、日本では金融コンプライアンスに関するスキルを持つ人材は依然としてニッチであり、金融機関は関連する業務を他のリスク管理チームに割り当てているのが現状です。 


自動化がコンプライアンス業務を合理化する

「自動化」は業務の効率性、正確性、生産性を向上させることで、業種を問わず私たちの働き方を変革しています。金融コンプライアンスも例外ではなく、継続的なモニタリングやリアルタイムでの取引分析、そして不審な活動の迅速な特定を可能にしています。 
 
これは日本においても同様で、自動化を導入するためのリソースを持つ企業は、アンチ・マネー・ロンダリング(AML)のためのKnow Your Customer(KYC)スクリーニング(顧客確認スクリーニング)手続きを効率化することに成功しています。それでもなお、コンプライアンスには人の手が欠かせない重要な部分も存在します。例えば、変化する国内外の規制に適応し、企業のために適切な方針を策定できる人材は、自動化が進む今でも依然として求められています。 
この分野で成功を目指す日本の候補者に関しては、オールラウンダーとして自らを成長させ、将来的に抜きんでた人材となるために、分析やアドバイザリー能力を重視するのが良いでしょう。 


コンプライアンス人材は何を求めているのか?

金融機関が健全な経営状態を維持する上で、コンプライアンス人材が不可欠な役割を担っていることは明らかです。しかし、日本におけるコンプライアンスのニーズに対応できる人材は、供給が限られています。言うまでもなく、必須スキルを持ちながら言語の壁を乗り越える能力まで持っている候補者を探すことは、企業にとって困難を極めています。 
また、業界の常識を覆すような動きもみられます。これまでは外資系企業に転職してキャリアアップを図るのが一般的でしたが、現在ではその逆で、コンプライアンスに携わる人材は日本国内の企業への就職を求めるようになっています。 
 
日系企業は外資系企業に比べて給与水準が低い一方で、良いワークライフバランスを提供する傾向があります。昨今の外資系企業では、求められる業務量や成果は据え置かれているにも関わらず、従業員の削減が進んでいることから、日系企業と比較した際ワークライフバランスの維持が難しくなっています。 また、外資系企業が完全な出社型に回帰する一方で、日系企業はアフターコロナにおいても現状維持を好み、柔軟な働き方の選択肢を提供するという点で外資系企業を上回る結果を出しています。 


企業はどのようにコンプライアンス人材を惹きつけ、維持できるか?

では、コンプライアンス人材を確保するために日本の企業はどのようにすればいいでしょうか?企業のターゲット人材が求める福利厚生は、基本的な報酬だけにとどまらず、健康とウェルネス、柔軟な勤務形態、内部昇進、キャリア開発の機会などが含まれます。 そのため、企業は優秀な人材を惹きつけ、維持するために、従業員価値提案(EVP)を再検討し、誠実さ・共感性・パーソナライゼーションを強調する必要があります。これにより、企業の魅力を高め、優れた人材を確保し続けることができるでしょう。 
 
また、コンプライアンスの変化の激しい環境を考慮し、サイバーセキュリティ、データプライバシーに関する法律、労働安全衛生、多様性と包括性のような重要な分野のトレーニングを提供することも検討すべきです。すでにこのような取り組みを行っている企業は、定期的にモジュールを更新し、研修が現在の業界標準に適切に沿ったものであることを徹底する必要があります。 


金融業界における最も需要の高いコンプライアンス関連の職種

以下は、2024年度の日本の金融業界で最も需要の高い役割TOP4とその平均年収です。 
 
1.アンチ・マネー・ロンダリング/金融犯罪コンプライアンス(600万円〜2,400万円) 

特に外資系銀行において優先度の高い役割です。マネーロンダリングやその他の金融犯罪を検知・防止するためのプロセス監視を担当します。 
 
2.市場(株式)コンプライアンス(600万円〜2,400万円) 
 

複雑な株式デリバティブ市場において慎重な処理が要求される、需要の高い役割です。株式市場に関連するトレーディング活動および業務が、関連法規および社内ポリシーを遵守していることを確認する責任を担います。 
 
3.コンプライアンス統括責任者/CCO(2,200万円〜5,000万円) 
 

CCOは組織内のコンプライアンスを監督・管理する役割を担っています。熱心な候補者が大勢いるにもかかわらず、この役割の要件を満たす適切な人材を見つけることは難しいでしょう。 
 
4.コンプライアンス監視(600万円〜2,400万円) 
 

コンプライアンス監視は組織内の取引活動やコミュニケーションが、法律や規制の要件に準拠していることを確認する責任を担います。この職に従事する人は「より良い職場」を求める傾向があるため、離職率が高い職種だといえます。 

金融業界の求人情報はこちらから 
 
ヘイズアジア給与ガイド は、日本や中国、香港特別行政区、マレーシア、シンガポール、タイの約9,000名の人材や採用担当者を対象に実施した調査結果をまとめています。 
 
アジアにおける様々な業界の給与ベンチマークと、業界別の採用概要データを入手し、人材マネジメントやキャリアの意思決定にぜひお役立てください。
 
 

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