電子メール・ポリシー

日々のビジネスでのやりとりを電子メールで行う機会が多くなるにつれ、電子メールに関する潜在的なリスクも同じように高まっています。このことは、最近話題に上がることが特に多くなっています。

雇用主の多くは、職場での電子メールの使用に関するポリシーを実際には持っておらず、それが注目されるのは問題が発生したときだけで、そのときには手遅れとなる場合がほとんどです。IT機器の使用に関するポリシーの設定をIT部門に丸投げしているケースも多くありますが、このようなポリシーは企業のあらゆる部分に影響を及ぼす重大な領域であり、そのことを心に留めて設定する必要があります。

電子メール・システムの利用が社員解雇の大きな理由となったこともいくつかあり、そのなかでももっとも有名なのがアンセット航空の決定でしょう。電子メール・ポリシーの内容が法廷での審理で問われ、解雇についての論点の1つとなりました。

言うまでもなく、電子メールの本質はコミュニケーションを簡単にできることであり、誰でもその利点を損ないたくはないでしょう。しかし、社員がこの価値あるビジネス・ツールを個人的に使用するときに問題が起こり、雇用主に損害を与える場合もあります。アンセット航空の事例では、労働組合の代表でもあった、ある社員が会社の電子メール・システムを使い、組合の情報を他の社員に知らせていました。アンセットの意見では、その電子メールは「経営陣を信用しないようにアンセットの社員をけしかける」内容のものでした。

また別の事例では、社員がいわゆる「トランクセール(自らの不要品販売)」の道具として電子メールを長時間使用していたために生産性が20%低下している、と考えたCEOもいました。社員が同僚から電子メールを通じてセクシャル・ハラスメントを受けていると思った例もあります。慎重に練られたポリシーがなければ、なんらかの懲戒処分を訴えることもほとんどできないため、そのような社員はチェックも受けずに行動を続けられるのです。

当然ながら、雇用主は、電子メールの使用をビジネス関連だけや、通常の活動および責任の範囲内に制限することができます。重要なのは、ポリシーの伝え方と意識の持たせ方であり、明確かつ簡潔な内容にし、導入初日より社員全員が簡単に理解できるようにすることです。ログイン画面の下に専門用語がびっしり書かれたメッセージを添えるだけでは、意味がありません!

言うまでもありませんが、電子メール・ポリシーは既存の他のポリシーとの整合性がとられていなければならず、雇用や差別、プライバシーに関係する他の法律と矛盾してはいけません。特に注意すべきことは、導入、周知徹底、ならびに電子メール・ポリシーが絶えず紹介されているかどうか - つまり、雇用契約、ログイン画面あるいは社員ハンドブックに電子メール・ポリシーに関する記述があるかどうか - で、要するに社員が至るところから会社やそのポリシーに関する情報に自由にアクセスできる環境が整っていなければなりません。

ポリシーの文案を作成する際には、できるだけ多くの人に参画してもらうのが良いでしょう。筆者は普段は委員会による運営のようなものは好きではありませんが、このようなケースでは、影響力のある人々からできる限りの「賛同」を得る方が仕事が円滑に進むでしょう。お勧めの方法は、ポリシー、あるいはポリシーの紹介を雇用契約に組み入れ、既存の社員にはメモ形式で発表し(これら社員にはポリシーに関するフィードバックを要請しても良いでしょう)、さらにログイン画面あるいはマーチャンダイジング部門やIT部門からのメッセージで繰り返し知らせることです。

はじめのほうで述べたように、この種の事柄は、問題が発生してしまえば、後追いで対処するのが非常に困難 - その段階ではすでに遅すぎ - となります。