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LESSONS ON INTERNATIONAL EXPANSION

ヘイズとマンチェスター・シティに学ぶ海外での新規展開

新規市場への進出はどのような組織にとっても非常に大きな節目となります。同時に、新たな国での事業展開は最も困難を伴う作業でもあり、適切な人材を見つけることからバランスの取れたチームを形成することまで、さまざまな要素を検討する必要があります。 

マンチェスター・シティ・フットボールクラブはこの数年で、イングランド北西部の本拠地に加え、シンガポールやアブダビといった海外拠点の拡大を進めてきました。国際的な人材の採用に関して数十年に及ぶ経験を持つヘイズは、クラブの公式リクルートメント・パートナーとして、複数の地域にまたがってクラブのために最適な候補の発掘にあたってきました。シティ・フットボールグループの海外展開はこれまで大きな成功を収めており、今後さらに多くの海外拠点を設立していく予定です。それでは、海外展開を確実に成功に導くためにはどうすれば良いのか、マンチェスター・シティの成功の秘密を探ってみましょう。

本部との密接な連携

新たな地域に進出して拠点を設立するにあたっては、現地でさまざまな予想外の事態が待ち受けています。適材適所の人材を探すことから、拠点にふさわしい設備を備えた施設を整えることまで、電話1つかける時間もなかなか見つけられないかも知れません。それでも、常に本部(本社)と頻繁に連絡を取り合って密接な連携を保つことが不可欠です。
ヘイズでアトラクションおよびモビリティ担当責任者を務めるイソベル・ハンナン(Isobel Hannan)は、「海外で事業拠点や子会社を設立する場合、独断で物事を進めてグループの連携を損なうことのないようにすることは非常に重要です。成功のためには、本部と確実にコミュニケーションを取りながらグループとして一貫した手法で体制を固めて行くことが非常に重要であり、事業目標の実現に向けてスタッフにしっかりとした参画意識を持たせていく上でもカギとなります」と述べています。

多彩な経験を融合

新たに立ち上げたオフィスで何より大事なことは、リーダーがすぐに仕事に取りかかれる体制を整えることです。グループとしての文化やビジネス手法、事業目標などは、スタート時点からオフィスの隅々にまで十分に植え付けられていなければなりません。新たな拠点のトップ候補をグループ内部で検討すべき理由はここにあります。
「幹部クラスに内部の人材を登用することは、スタートダッシュをかけるためには非常に有効な方法です。同時に、現在の職場で昇進の機会が得られないでいる人たちにとっても、絶好のキャリアアップのチャンスになるため、社員の流出防止策を強化でき、人材育成の点からもプラスになります」とハンナンは指摘します。
新規オフィスを立ち上げる際には組織運営に関する知識が重要であり、特に海外での拠点の立ち上げの場合には現地の文化を理解し、それらを積極的に取り入れる姿勢も求められます。シティ・フットボールクラブが2015年に初の海外拠点をシンガポールに設立した際、幹部クラスに現地の事情に詳しいメンバーを揃えることができました。シティ・フットボールクラブのグループHRディレクター、フィオナ・ブラウン(Fiona Brown)氏は、「新しいオフィスの業務をスムーズに開始するためには、適材適所の人材を得ることがいかに大切かということを認識しておく必要があります」と力説しています。
「シンガポールでは、すでに長年クラブで働き、私たちの事業についてもシンガポールの事情にも精通している人物が現地での立ち上げにあたりました。ビジネスの知識があることは大切ですが、これをそれぞれの地域に合ったやり方で進めていくことも重要です。私たちはマンチェスター流のやり方を現地に押し付けようとは思いません。業務の進め方にしても柔軟に対応し、必要に応じて別のやり方を取り入れなければならないこともあります。」

入社後の効果的な研修体制

新たに採用したスタッフに対する効果的な研修体制を整えておくことは、本社から離れた拠点の場合、特に重要になります。しっかりとしたプロセスを経ることで、会社としての目標を確実に理解させることができます。マンチェスター・シティの場合、シニアレベルのスタッフにはクラブの運営体制を自分の目で見る機会を与えることで、こうした目的を実践しています。
フィオナ・ブラウン氏はこの点について、次のように述べています。
「私たちにとって、新規スタッフにできるだけクラブのことを理解してもらい、実際の業務に触れてもらうことが研修になっています。海外オフィスでシニアレベルのスタッフを採用した場合、まずは一定期間、ホームであるマンチェスターに滞在してクラブのビジネスについて学び、各部門の幹部と会ってクラブのやり方を理解してもらいます。単に幹部メンバーと一緒にビデオを見ながらシティのモデルを説明するといったやり方ではなく、新メンバーを2週間ごとにさまざまなオフィスに送り込んでいろいろな人と接してもらい、それぞれがクラブの中でどのような役割を担っているのかを見聞して理解してもらいます。こうすることで、組織の中で実際的な接点をいくつも得ることができます。クラブの事業体制についての理解が深まれば、それぞれが担当する地域でも十分うまくやっていくことができます。」

焦点を明確に

現地にフィットした最高のチームが整えられたとしても、会社としては慎重に事を進め、手を広げすぎないよう注意する必要があります。新しいオフィスとしては、できること全てに手を付けたくなり、市場拡大の過程で往々にして無理をしがちです。この点について、ヘイズのアジア担当マネージング・ディレクター、クリスティーン・ライト(Christine Wright)は、次のように述べています。「しっかりと焦点を定め、まずは現地でいくつかの事業目標を達成することを目指すべきです。手を広げる前にこうした目標について卓越した実績を挙げ、それらの分野でしっかりとした評判を築いておけば、その後事業を拡大していく際にも必ず活きてきます。」

何より大切なことは、海外で新たなチームを形成する時には、全社的に気分を盛り上げなければならないということです。初めての海外進出であっても、50カ国目であっても、新規に市場を拡大することで素晴らしいチャンスが広がります。新たな展開にはさまざまな苦難がつきものですが、チャンスもまた切り拓かれるということを忘れてはなりません。リーダーの立場にある人達が前向きな姿勢を見せることで、それがチーム全体に広がり、新たな領域で最高のスタートダッシュを切ることができるのです。