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時代が求めるリーダー像とは?

時代が求めるリーダー像とは?

 

現在のビジネスを取り巻く課題に対処するためには、新しいアプローチが求められています。優れたリーダーは、勤続年数に関らず企業の発展のためにスキルの向上に努めなければなりません。しかし、現代のリーダーには何が求められ、また企業はどのようにリーダーを育成すればよいのでしょうか。

強いリーダーシップと優れた企業業績の相関性は、多くの研究で指摘されています。一方で、リーダーに求められる資質は、ジュニアマネージャーから上級役員まで職層を問わず変化しています。現代社会は、急速な変化と予期せぬ発展を遂げており、これに対応するために新しい能力が求められています。リーダーは、こうした新しい能力と従来からの能力を奏功的に活用しなければなりません。現在のリーダーに求められている資質とは、一体どのようなものなのでしょうか。

マッキンゼー・アンド・カンパニーが世界の企業を対象に実施した調査によると、90%を超えるCEOが、自社で最も力を入れる人事的課題としてリーダー職の育成を挙げており、関連投資の増額を計画しています。報告書では、企業が長期的に業績を維持できるか否かの80%は、リーダーシップの強さによって決まるとされています。しかし、リーダーシップの強化がプラスの結果につながることについて、半数以上の企業が確信を持てずにいることも報告されています。

リーダーとは何か

リーダーが企業発展のため求められている新たなスキルを考察する前に、リーダーの存在意義について改めて考えてみる必要がありそうです。同僚と同じレベルの仕事をしているだけでは、必ずしもリーダーにはなれません。

Facebook社のCOO、シェリル・サンドバーグ氏は、ハーバード大学で「リーダーシップとは、自分自身の存在が他者のパフォーマンスを上げ、自分の不在時でもその影響が持続すること」と演説しました。

一方、元宇宙飛行士のクリス・ハドフィールド氏(国際宇宙ステーションでデビット・ボウイの「Space Odyssey」を歌い録画したことで有名)は、リーダーシップは「輝かしい功績を上げることではない」と語ります。

「チームを常に目標に向かわせ、最善の努力で達成できるよう動機を与えることです。利益が大きく、重大な結果を求められているときは特に」と、氏は著書の「宇宙飛行士が教える地球の歩き方(原題『An Astronaut’s Guide to Life on Earth』)」で記しています。
リーダーのあり方については、様々な意見が存在します。しかし、共通しているのは、真のリーダーは他のメンバーのパフォーマンスを向上させることができる、という点です。しかし、現代の職場でこうした資質を持つリーダーには、どのような特徴があるのでしょうか。

リーダーシップのスタイルは臨機応変に

米国デロイト・コンサルティング社のヒューマンキャピタル・プリンシパル、ステイシー・フィルポット氏は、過去25年に渡り23,000人の上級管理職を対象に実施した心理学調査に基づき、「リーダーに最も強く求められる中核的なスキルは昔から変化していない」と語ります。

状況判断力、モチベーション、機動力、心の機微を察する能力、自分の感情を理解・コントロールし表現する能力。

フィルポット氏は「これらの能力があれば、変化が激しく(Volatile)不透明(Uncertain)で複雑(Complex)曖昧(Ambiguous)な(VUCA)今日の環境にあっても、同僚より早くリーダーに就任することができるでしょう」と語ります。

しかし、カナダトロントに本拠を置くスコシアバンクのカナディアンバンキング・マーケティング部門のヴァイス・プレジデント、ジョン・ロッコ氏は「文化が変化している昨今、リーダーは新たなリーダーシップスタイルを獲得する必要がある」と指摘します。「答えを一つに絞らず、失敗から学び、信頼関係と開かれた環境を作り出してイノベーションにつなげることが大切なのです」と同氏は説明し、「こうした姿勢は従業員にも同様に求められます」と強調しました。

ロッコ氏は、共感や弱さを見せるといった、従来であれば「弱さ」と受け取られていた姿勢がチームを強化する、と語ります。つまり現代の要求されているのは「コマンド・アンド・コントロール(支配型リーダーシップ)」ではなく、「サーバント・リーダーシップ(支援型リーダーシップ)」なのだ、との見解を示しました。

しかし、支援型リーダーシップについての疑問も呈される中、企業はこれを奨励するために何ができるのでしょうか。GEヘルスケアのRCIS人事部門リーダーのアルス・ポリヤコヴァ氏は、支援型リーダーシップを実践したリーダーへの称賛が大切だ、と語ります。「リーダーが自らを省みる機会を多く与え、自身のふるまいを理解させるのです」と、氏は主張します。

同氏は社内の実例として、GEヘルスケアで最も成功したリーダーのふるまいをもとに参考となる基準を確立し、他のリーダーへの奨励を進め普及させたことを紹介しました。従業員を対象とした調査を行い、リーダーがGEヘルスケアの「文化的柱」、つまり信頼関係を強化し従業員を力づける活動に貢献したか否かを評価することで、リーダーを評価するのです。

リーダーシップの評価法

企業の価値観を、社員全員に理解されるように定義したのち(360度評価などを使用)、リーダーシップの評価に移ります。ロッコ氏は「こうした取り組みはトップダウンで実施すべき」と、主張します。「最も上位の管理職が価値観に沿ったリーダーシップを体現すべきです。リーダーが有言実行で実践すれば、全階層の従業員へ非常にスムーズに普及していくでしょう。」
一方、これに反するふるまいが目立つようになった場合には、許容してはならない、と同氏は指摘します。「誤ったリーダーシップを奨励する空気が醸成されてしまうからです」と氏は説明します。

信頼関係の文化

バイエル社のロシアと独立国家共同体(CIS)地区で人事採用部門のリーダーを勤めるナデツカ・ココリヤ氏は、「従業員の信頼獲得が、かつてないほど重要になっています」と語ります。従業員は、気候変動のような社会問題についてリーダーが行動を起こすことを期待するようになっており、行動を起こすことが信頼感を醸成するための一手段となっているためです。事実、2019年版のEdelman Trust Barometerでは、71%の従業員が、自社のCEOは社会問題に対応することが重要、と回答しています。

見返りもあります。同調査では、社会問題に対応する雇用主は、従業員からより深い信頼を獲得しており、エンゲージメントやロイヤリティでも高い数値が得られました。「従業員は、信頼できない雇用主には従いません」と、ロシア・CIS地域の従業員信頼度調査を担当したココリヤ氏は語ります。「従業員はオンラインなど豊富な情報源に囲まれています。このため、過去に例を見ないほど経営層の決定に疑問を持つ傾向も高まっているのです。」
「リーダーシップのスタイルが変化していることは明らかです。最も効果的なリーダーシップとは、異なる状況に柔軟に対応できることです。」こう主張するのは、シンガポールのセンター・フォー・エデュケーションのCEO、スタッター・バワニー教授です。「リーダーは、状況に応じたリーダーシップの取り方を判断する知識と、幅広いマネジメントスタイルを持っていなければなりません」と氏は言います。「例えば、サイバーセキュリティの破綻など、確立されたシナリオのない状況でも指導力を発揮できなければなりません。」

新しい時代の創出に向けて

現在の職場では、ベビーブーマー、X世代、ミレニアル世代、Z世代、I世代と、最大で5つにわたる世代の従業員が一緒に働くケースも想定されます。リーダーは、異なる世代にバランスよく対応できる能力も求められています。「The Remix:How to lead and succeed in the multigenerational workplace」の著者、リンゼー・ポーラック氏によると、リーダーシップに求める条件は世代ごとに異なっています。

同氏は「若い世代に対処するには、旧来のスタイルと新しいリーダーシップを兼ね備える必要がある」と語ります。ある推計によると、ミレニアル世代(20代)は、2030年までに米国の労働力の4分の3を占めるとされています。

企業のパフォーマンスを良好に維持するためには、この世代のエンゲージメントを引き出すことが肝要なのですが、ミレニアル世代は、ソーシャルメディアに囲まれて育ったこともあり、旧来の世代に比べてリーダーのコミュニケーションに透明性を求める傾向が強くみられます。リーダーは、この傾向を見据えた行動をとらなければなりません。

「20年前であれば、従業員のほうに理解する姿勢が求められました。しかし、ミレニアル世代には、指示を出すときにも理由を明確に説明し、エンゲージメントを維持することが必要です」とポーラック氏は語ります。

向学心を忘れないこと

「労働環境は急速な変化にさらされています。リーダーは、過去の経験に頼るだけではこの潮流についていくことができません」と語るのは、リーダーシップに関するコンサルティングを行うRBLグループの共同創業者、ノーム・スモールウッド氏です。「さまざまな状況に対処することで弾力性が身につくことになり、不透明な未来にも対応することができるようになります。しかし、多くのリーダーは一つの部門に専従したがる傾向が見られます」と、同氏は懸念します。

Amazon UKの人事部長ベン・ファーマー氏は、同氏の懸念に理解を示します。「経験が常に優れた知見や判断力につながる保証はありません。愚直に取り組んだからといって、新しい考え方や変化を寛容に受け入れることができるとは限らないのです。」

ファーマー氏が企業に求めるのは、経験が豊富であるとともに未来への理解力に優れたリーダーを発掘・育成することです。「今後発展する新たなトレンドを理解し、その理解力を行動に結びつけるところから成功は生まれるのです」と同氏は語ります。
では、未来を予見する力と過去を洞察する力は、どのようにバランスを取ればよいのでしょうか。「ワンパターン(one-size-fits-all)は通用しない、と認識することです」とファーマー氏は指摘します。「経験を柔軟に活かすことができるか否かは、企業とその部門次第でもあります。」

バワニー教授は「例えば、製造業など(ロボティクスのおかげで)急速に発展している産業では経験の重要性はそれほど高くはありません。旧来の知識は急速に廃れていくからです」と補足しています。

企業文化の重要性

バワニー教授によると、企業文化も重要な要素となります。例えば、リスクを忌避する企業では、革新的な考えよりも経験を重視します。ステークホルダーが、失敗した場合の反動を懸念するからです。
ロンドン・カウンシルのコンサルタント・チーフ・インフォメーション・オフィサーのオーミド・シラジ氏によると、このリスクを緩和するために企業に求められるのは、精神力よりも科学的な裏付けに基づいて決定できるリーダーを発掘・育成することです。

「リーダーは、決定に至った根拠を説明するためにデータを駆使することが求められています。しかし、使えるデータを増やすためには、直観力もまた必要なのです」と同氏は説明します。つまり、証拠を裏付けるためには、従来培ってきた決断力が必要なのです。「技術が主導する世界において、私たちが求めているのは人間力の高いリーダーなのです。」

SAP社のバンキング産業戦略部門、英国フィナンシャル・サービス・リーダーのアンジュ・クメール氏は「優れたリーダー像を一つに絞ることはできません」と語ります。それぞれの企業が、企業文化や業界慣習、従業員構成に基づいて自社に見合ったリーダーの育成を手掛けることが必要である、と同氏は強調しています。

結論として同氏は「リーダーは、『今日の現実は明日の過去』と理解することが必要。積極的に物事を形作りながら、異なる方法に機敏に対応できる者が勝者となるのです」と締めくくりました。 

デロイト社が未来のリーダーに求められる6つの資質を発表

デロイト社は、2018年21歳から64歳の労働者5,075名を対象とした調査を行い、VUCA環境下において未来のリーダーに求められる6つの特徴を特定しました。

コミットメント:リーダーは、従業員全員に対し公平に、かつ敬意をもって対応し、従業員が相互にウェルビーイングを高めあい、信頼しあうことで、自分本来の姿でいられる環境を醸成しなければなりません。

勇気:リーダーは、必要に応じて困難な対話もこなし、インクルーシブ(多様性を認める)な機会を作り出し、自主性をもって他人との関係性を深めることが必要です。

偏見に対する自覚:リーダーは、透明性・一貫性のある決定を行い、これが周知されるよう、無意識のバイアスが働いていない否か意識しなければなりません。

好奇心:リーダーは他人の意見に注意して耳を傾け、これを尊重しなければなりません。

文化に対する理解:リーダーは異なる文化を学ぶ機会を積極的に探し、文化的背景に留意することが必要です。

人と人を結びつける力:最後に、リーダーは多様な考え方を創出できるチームを育てることが必要です。