コロナ禍の海外転職:イングランドからオーストラリアへ

海外転職に挑戦するのは、仕事探しからビザの手続きまで、簡単なことではありません。タイミングが重要になることも多く、新型コロナウイルスの国際的な感染流行のさなかに、仕事のため海外へ移住することは、一見すると非常に難しいことに思えるかもしれません。
しかし、新型コロナウイルスの影響から、いち早く立ち直っている国々もあります。特に、オーストラリアの経済回復は、誰もが予想していたより早いものでした。財政出動や新型コロナウイルス感染抑制は、市場を後押ししています。実際に、「ヘイズ・オーストラリア&ニュージーランド給与ガイド2021(英語のみ)」によると、失業率は減少傾向が続いています。
オーストラリアにおける人材のスキル不足
オーストラリアとニュージーランドの約4分の3の経営者は、正社員の数が、新型コロナウイルス感染拡大前の水準と同程度かそれ以上に増えていると回答しています。最も特筆すべきことは、63%が成長または急速な成長軌道に戻り、72%が今後12か月間に企業活動が活発になると答えていることです。さらに、約半数(47%)の経営者が正社員数を増やす意向があり、15%が派遣・契約社員の採用を増やすとしています。このことは、求職者にとって大きなチャンスであることを示しています。また、経営者にとっても、オーストラリアの国内外で人材を探す良い機会になると言えるでしょう。
しかし、経営者が採用へ前向きな動きを見せている一方で、企業に合ったスキルを持つ優秀な人材を獲得することは、当初考えられていたほど簡単ではありません。昔からの課題である人材のスキル不足が、再び大きな問題となっています。実際に、約3分2の経営者が、今後1年間、人材のスキル不足が企業経営や事業運営に大きな影響を与えるだろうと回答しています。
では、具体的に求職者へどのような影響があるのでしょうか。
オーストラリアの経営者は海外人材を求めている
2021年の初め、オーストラリアのジョシュ・フライデンバーグ財務相は、優秀な外国人材を誘致するための施策を発表しました。2021~2022年の予算案(英語のみ)として、政府は、「新しいグローバル人材ビザと一時活動ビザを導入し、税務上の居住権の枠組みを近代化することで、高いスキルを持つ海外人材の受け入れを促進します」と説明しています。つまり、オーストラリアへの移住を検討している人にとって、チャンスが大きく広がったということです。
さらに、ABCニュース(英語のみ)に対して同財務相は、「他の国々がウイルスの感染対策に苦戦し増税の動きを見せている中、私たちは、景気回復に向けた対策を一層強化し、オーストラリアの将来を支える優秀な人材を招致できるよう注力していきます」と話しました。このことは、オーストラリアへの転職を検討すべき理由を示しています。
Hays Globalink(英語のみ)では、オーストラリアやニュージーランドへの転職支援に力を入れています。本サービスは、帰国を検討しているオーストラリア人やニュージーランド人の方に加え、高いスキルを持ち、ビザ取得支援などのスポンサーシップを獲得したイングランド人の方からワーキングホリデーを希望する方まで、様々な方が利用しています。コロナ禍にも関わらず、人材が不足している地域もあります。また、優先的に移民として受け入れる職種を示す「優先移住技能職業リスト(PMSOL)(英語のみ)」が新しく更新されたことから、必要なスキルを持つ人材をさらにオーストラリアに転職させることができるようになりました。
マーティンさんの体験談
オーストラリアでの転職を成功させたマーティンさんの体験談です。イギリスに住んでいたマーティンさんはPMSOLに記載されている職種で働いており、南オーストラリア州の防衛関連の業務で非常に高い需要がありました。アデレードにあるヘイズのオフィスは、現地で十分なスキルを持つ人材がいないことから、その仕事に適した人材を海外から探していたのです。
今回、パートナーのシャーロットさんとともに、オーストラリアへの転職を成功させたマーティンさんにインタビューをしました。
コロナ禍にオーストラリアへの転職を考えた理由は?
マーティンさん:イギリスでの仕事は順調でしたが、Hays Globalinkから、より良い収入とライフスタイルを実現できる仕事があると連絡がありました。そのおかげでパートナーのシャーロットと私は、住宅ローンの資金を貯め、より良いワークライフバランスを得ることができました。
コロナ禍が海外転職へのモチベーションを下げませんでしたか?
マーティンさん:ある意味、コロナ禍だからこそ、勇気を持って行動できたということはあります。オーストラリアは、他の国と比べて新型コロナウイルスへの対応が非常に優れていたので、安心して移住することができました。
リモート形式での面接はどうでしたか?
マーティンさん:そこまで難しいものではありませんでした。Zoomを使うのは簡単でしたし、ヘイズの方々や現在の会社の採用担当者からサポートを受けることができたからです。ボディランゲージや面接官が考えていることを理解するのは難しかったですが、スクリーンを通して面接することに緊張はしませんでした。全体のプロセスとしても、大きなストレスはなく、簡単なものだったと思います。
ビザの手続きはどうでしたか?
マーティンさん:ビザの手続きにはストレスを感じました。必要な情報を集めるのに時間はかかりませんでしたが、記入が必要な書類やしなければならないことが多くあったからです。提出が終われば、返事を待たなければならず、不安になることもありました。しかし、カレンさんという入国審査官が担当してくれたことがラッキーでした。9月に内定をもらい、11月の終わりにはビザの承認を得ることができたのです。その後、2月にオーストラリアへ向かい、2週間の隔離措置を受けました。新型コロナウイルスの影響で、ビザの申請が遅れることはありませんでしたが、1月に予定していた飛行機の搭載が遅延となり、計画は1か月ずれることになりました。その時、すでに仕事をやめていましたが、幸いなことにオーストラリアに行くまでの間、シャーロットの父親の家に滞在させてもらうことができました。
オーストラリアへの転職で一番難しかったことは?
マーティンさん:最も心残りだったのは、家族や友人を置いていくことでした。新型コロナウイルスの影響もあって、しばらくの間会うことができなくなるからです。また、荷物を送らずに、二つのスーツケースだけを持っていくことにしました。そこから、必要なものを考えていきました。現在は生活に必要なものが全て揃っていて、部屋の数も多い、素晴らしい家に住んでいます。
海外転職を考えている人にアドバイスはありますか?
マーティンさん:海外へ行く前に、できる限り貯金をしておくことをお勧めします。私たちの場合、オーストラリアへ着いたとき、1万ドル(約85万円)の貯金がありました。その資金で長く生活することはできませんでしたが、現地の生活に慣れるために大きな助けとなりました。良い住居を見つけられたのは良かったです。シャーロットは、必要な情報を集めるのにかなり時間をかけていたので。2週間の隔離措置は大変なので、時間をつぶすために何か持ってくると良いでしょう。また、海外へ行く前に、銀行口座を整理しておくこともお勧めします。さらに、車のローンを組むためにオーストラリアの運転免許も必要になります。最後に、しっかりリラックスする時間を作るようにしてください。その時には気づかないかもしれませんが、海外へ転職をするために多くのことをしなければならないからです。自分は、全体的に良い経験ができたと思います。一度決めたら、後ろを振り返らないことが大切です!
ダイアン・ボイス
Hays Globalink APAC /シニアビジネスマネージャー
1999年、ヘイズ・コンストラクション&プロパティに入社。大学時代に学んだエンジニアリングの知識を活かし、当初はロンドンのエンジニアリング・チームで採用をした。2002年、ヘイズへ移動し、シドニーでファシリティマネジメントのセクション・マネージャーに就任。幅広いレベルの人材を採用し、顧客との強固な関係と候補者の信頼を確立した。
このような経験を活かし、2006年にイギリスに戻り、Hays Globalinkの建設・不動産部門を設立。ロンドンを拠点とし、オーストラリアとニュージーランドの企業に特化した採用を行っている。また、オーストラリアやニュージーランドへ帰国する人材やビザ取得支援を受けることができるような高いスキルを持つ移民を対象に、求人紹介をしている。