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サードカルチャーキッズとは?多文化環境で生きてきた彼らを引きこみ、活かすには?

サードカルチャーキッズとは?多文化環境で生きてきた彼らを引きこみ、活かすには?

 

私は12歳までに、バンコクのインターナショナルスクールやシドニーの公立学校など7つの学校に通いました。台湾で生まれ、その後アジア太平洋のいくつかの国々で暮らし、現在はシンガポールに住んでいます。見た目は中国人のようですが、話せばオーストラリア訛りがあります。ここで「訛り」と説明したのは、インターナショナルスクールに通っている子どもたちによく見られる変わったアメリカのアクセントが混じっているからです。私のように海外駐在員の両親を持つ子どもを、「サードカルチャーキッズ(TCK)」と呼びます。
 
「TCK」という言葉は、作家のリーケンと社会学者のポロックが提唱したものです。彼らは、TCKを「成長期の大部分に、両親の国やパスポート(法的に出生地とされている国)に記載されている国以外の文化で育った人」と定義しています。また、移民の子供や、幼いころに外国の寄宿学校に通った人も含まれます。しかし、このブログでは、「海外駐在員の子ども」にフォーカスして話をしたいと思います。
30年ほど前から、ビジネスのグローバル化によって、多くの人たちが企業から海外駐在を提案されるようになりました。そのような人たちは、海外駐在が自分たちのキャリアに良い影響をもたらすことを知り、それまでは考えもしなかった国に移住することに決めました。そして数十年後の現在、その海外駐在員の子どもたち、つまりTCKの第一世代が成長して働き始めているのです。
 
TCKのようなバックグラウンドを持つ人材は、異なる人々や環境に素早く適応することに長けています。企業が海外で文化的なギャップを解消し、現地のクライアントにアピールしたいときに活躍するでしょう。しかし、TCKの人材を組織に引き込み活躍してもらうには、たとえ見た目などが似ていたとしても、他の従業員とは考え方やモチベーションが異なるかもしれないということを念頭に置く必要があります。
今回のブログでは、TCKのような人材を組織に引き込み、活躍してもらうためのポイントを紹介いたします。
 

1.安定性ではなく昇進を重視する

TCKには、海外への移住など一時的なイベントに振り回されてきた経験を持つ人が多く、新しい環境へ移ることに対してそれほど抵抗がありません。それは、これまでの経験から新しい環境で人間関係を築く方法を学んできているからです。TCKのような人材にアプローチしたいときは、彼らが世界のどこへ行くことになろうとも、どのようなキャリアを歩むことになるのか、早く昇進することができるのかを伝えましょう。また、社内でキャリアアップをして国際的に活躍している人のエピソードを伝えるのも良いと思います。
 
また、入社後は、働き始めて間もないとしても、キャリアプランについて相談があれば、彼らの話をよく聞くようにしてください。もちろん、他のチームメンバーにしているのと同じように、実力主義かつ公平なアプローチで彼らを扱わなければなりません。しかし、TCKのような人材は、他の社員より早くキャリアを進めていきたいと考えています。先ほど説明したように、彼らはこれまで止まることなく人生を歩んできました。その期待に応えつつ、上手くマネジメントしていく必要があります。
 

2.彼らをつなぐ方法を見つける

他にも、頻繁に移住を経験してきた副産物として「精神的な自立」があります。多くのTCKTKCの人たちが感じているのは、「自分の居場所がない」ということです。彼らは、その環境に応じて素早く対応を変えることができますが、周囲に合わせるために自分たち自身を大きく見せてしまっていることも良く理解しています。自分たちの居場所がないという現実や常に適応を求められる状況に悩むこともあるのです。
 
TCKのような人材は、文化の違いに敏感で好奇心旺盛な人と意気投合することが多いです。できれば、同じようなバックグラウンドを持つ同僚と自分たちの経験を自由に共有できる環境を整えてあげる必要があります。また、面接時や入社した後も、彼らのバックグラウンドに対して積極的に関心を持つようにしましょう。
 

3.文化的な配慮をする

気心の知れた人たちに囲まれていると、人種や民族などについて一般化しすぎた話をしてしまうこともあると思います。過去には、私が長い間台湾やタイ、オーストラリア、シンガポールで過ごしていたことを忘れ、アジア人やオーストラリア人に対する思い込みを話す人もいました。
 
彼らのアイデンティティは、新しい環境に適応し続けてきた結果、形成されてきたということを忘れてはいけません。また、彼らが、一つの文化に属さないということだけでなく、複数の文化に根差しているということも重要です。だからこそ、文化的な配慮を行い、思い込みで判断するのではなく、彼らの話をよく聞くようにしてください。
 
また、多文化の中で実際に経験を積んできているので、あなたにとって目と耳のような存在になるでしょう。文化的な知識が必要な場合など、彼らの視点が役に立つと思う際には、意見を求めてみてください。そうすることで、様々な国を渡り歩いてきた彼らの強みを見極め、活かすことができると思います。
 
以上が、雇用主に対するアドバイスです。TCKは、幅広い用語であり、人それぞれ必ず違いがあります。TCKについてまとめている「サードカルチャーキッズ 多文化の間で生きる子どもたち(デビッド・C.ポロック、ルース=ヴァン・リーケン著)」という本があるので、ぜひ一度読んでみてください。
 
 
ジュディー・リュー/トレーニングマネージャー、アジア
ヘイズに5年以上勤務し、現在はアジアのトレーニングマネージャーを務めている。シドニーで法律と心理学の2つの学位を取得後、オーストラリアで事務弁護士としてキャリアを積み、2013年にシンガポールに移住。教室での学習だけではなく、オンラインや自己学習、実践、コーチングなどを戦略的に組み合わせる「ブレンデッド・ラーニング」を行っている。
 
「革新する勇気」、「新しいスキルを追求するためにゼロからやり直す勇気」といったことを信条としている。そのため、ジュディーとチームメンバーは、この変化の激しい時代の中で、ビジネスサイドと協力しながら、あらゆるレベルのスタッフのためのトレーニングを継続的に強化している。

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