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“THE GREAT RESIGNATION”: WHY ARE SO MANY THINKING ABOUT QUITTING?

「大量離職時代」到来―その7つの理由とは

 

ひっきりなしに電話に呼び出され、自分のキャリアアップは停滞中。誰も助けてくれないのに業務の負担は重くなる。上司は自分を気にかけてもいない。もう沢山だ―。

複数の報告書によると、世界各地でこれまで類を見ないほど多数の労働者が離職を考え始めています。彼らは、現状に辟易し、自発的に職場を去ろうとしているのです。

多数の労働者が離職を望む7つの理由

マイクロソフトは、世界各地の働き方を調査したレポート「Work Trend Index2021年版を発表しました。これによると、回答者の41%が、2022年内に現在の仕事を離職することを検討しています。これは、非常に高い数値であると言えるでしょう。

産業・組織心理学を研究しているアンソニー・クロッツ博士は、これを「The Great Resignation 大量離職時代」という言葉で表しました。人類は歴史上、「The Great Recession」(大不況・世界的金融不況)や「The Great Depression」(大恐慌・世界恐慌)など、「Great」が冠される時代の転換期を経験してきましたが、今回の大量離職時代の影響も、これら同様非常に大きなものになるでしょう。

では、その影響とは一体どのようなものなのでしょう。例を挙げると、皆さんが管理職ならば、部下のほぼ半数は今にも退職しようとしています。彼らが退職すると、皆さんのチームの成長計画、顧客、業績にはどのような影響が生じるでしょうか?コロナ禍も徐々に落ち着きを見せ、ビジネスを再び軌道に乗せようとしている最中に、大きな資産である人材が会社を去ろうとしているのです。

私たちは、過去に例のない大量離職時代を迎えようとしているわけですが、その理由を詳しく考える前に、ある事実に着目すべきでしょう。その事実とは、離職に対し抵抗感が比較的少ない労働者層が存在する、ということです。これについて、ガーディアン紙は、「退職しそうな労働者が属している層や彼らが退職する理由は、社会経済に生じた格差を見れば理解出来るであろう」と説明しています。

  • ブルーカラー労働者 ハーバード・ビジネス・スクールの教授であり、近々刊行される「The Power of Trust」の著者でもあるサンドラ・サッチャー教授は、ガーディアン紙の記事の中で、「低賃金の労働者は、例えわずかであっても現職より好条件を提示されれば、転職を前向きに考える確率が高い」と述べています。 BBCの記事でも説明されていますが、「小売業やサービス業に従事する労働者の多くは、倉庫やオフィスなどエントリーレベルの仕事を求めて退職していきます。彼らが求める転職先は、高い給与を提示する企業ではないかもしれません。しかし、福利厚生や昇進のチャンスが充実していたり、思いやりのある職場であったりします。また、こうした業界では新規採用の募集を幅広く行っている傾向があるため、転職は比較的容易であると多くの労働者が考えています」。
  • Z世代 前出の「Work Trend Index」によるとZ世代の労働者うち54%が離職を検討している可能性があると判明しました。同レポートでは、「Z世代の若者は、仕事に熱意や楽しみを見出したり、会議で意見交換や新しいアイディアの発表をしたりすることが困難であると回答している」との事実も報告しています。
  • 中堅・管理職層 ピープルアナリティクス企業のVisier社が実施した調査によると、2019年から2020年の間に、30歳から45歳の層の転職が増加しているとの結果が出ました。この事実からは、キャリア基盤が整った人材層が、転職志向を高めていることが伺われます。また、2020年12月現在で、管理職層の転職が前年同期から12%上昇していることも判明しました。

なぜ今、大量の人材流出が予想されているのでしょうか。これほど多くの人々が離職を考える理由は何でしょうか?

1. 安心して転職活動が出来るようになったと感じている

前出のクロッツ博士は、現在離職を考えている人々は、コロナ禍前から転職を計画していたものの、新型コロナウィルスの蔓延で転職市場が不安定になり判断を留保していました。しかし、景気が上向きになってきたため、改めて転職活動を再開したのだと思われます」と語ります。つまり、コロナ禍前から約1年半にわたって離職を考えていた人たちが、今になって転職市場に繰り出し始めた、と考えられるのです。

このように考えると、この現象はそれほど驚くべきことではないのでしょう。ワクチンの接種率も世界的に上昇し、経済の再開も徐々に進んでいます。世界の各地で転職市場が大きく動き出し、景気に対する安心感が回復しています。英国の人材紹介・派遣サービス業界団体、リクルートメント・アンド・エンプロイメント・コンフェデレーション(REC)のチーフ・エグゼクティブ、ニール・カーべリー氏は、こうした傾向を裏付ける発言をしています。「採用市場は、驚くべき早さで回復しています。しかし、まだ不透明な点があることも否めません」。ヘイズが発行している「UK・アイルランド給与ガイドによると、現在63%の企業が求人活動を開始しています。多くの人々が、転職には今が絶好のチャンスだと考えているのです。しかし、理由はこれだけではありません。

2. コロナ禍で自分の生活を振り返る余裕が生まれた

コロナ禍前は転職など考えてもいなかった人たちが、転職を考え始めた可能性もあります。ヘイズが先日LinkedInを通じて2万5,000人を対象に行ったアンケートによると、コロナ禍をきっかけに今後の仕事やキャリアについて考えるようになった、との回答率は74%に上りました。

多くの人々が、企業によるサポートが受けられないと感じたり、クロッツ博士が述べているように人生や死について過去に経験のない形で向き合うようになりました。コロナ禍をきっかけに、自分の仕事や人生について見つめ直す時間や余裕を十分に持つことが出来た人たちは少なくありません。これらはコロナ禍がなければ、出来なかった経験であると言えるでしょう。

LinkedInが公開しているポッドキャスト、「Hello Monday」でも伝えていますが、自分に何もしてくれない会社のために、気に染まない仕事を悠長にしていられるほど自分の人生は長くない、と多くの人が実感するようになったのです。

3. オフィスに戻りたいと思わなくなった

1年半に及ぶ在宅勤務で、人々は自分自身で生活をコントロールするようになりました。定刻通りに仕事をしながら、プライベートな生活も楽しめるベストな働き方をするようになったのです。その結果、今ではオフィスに戻るのが億劫に感じる者も出てきました。家族の近くで生活するため、また、夢見ていたライフスタイルを手に入れるため、転居した人や現在引っ越しを計画中の人もいます。こうした事例に鑑みると、オフィス復帰が離職を考える契機になった可能性も考えられます。「Work Trend Index」レポートは、こうした推測を裏付ける調査結果を発表しています。同レポートによると、46%の回答者が、リモート勤務が出来ることを理由に転居を検討していると答えています。

しかしオフィスへの復帰は、私たちが考えているほどデメリットが大きいものなのでしょうか?私自身も含め、オフィスに復帰した人たちの多くは、1週間に2、3日出勤するだけで、1年間空白となっていた他の仲間とのつながりが立て直されていく気がする、と答えています。

充実したキャリアライフのためには、自宅もオフィスも非常に重要である、というのが私の考えです。しかし、これとは異なる考えを持つ人たちがいるのも当然であると思います。

4. バーンアウトしてしまった

燃え尽き症候群(バーンアウト)については、しばしばニュースで取り上げられることもあります。マイクロソフト社の「Work Trend Index」によると、

  • 世界各国の労働者のうち、現在会社の要求が多すぎる、と答えた者は37%。
  • 勤務先がワークライフバランスに配慮してくれない、と答えた者は5人に1人。
  • 働き過ぎであると感じている者は54%で、極度の疲れを感じている者は39%。
  • リコミュニケーション・ツール、「Microsoft Teams」の平均的なユーザーが業務終了後にチャットに費やす時間は、就業中に比べて42%も多い。また、50%のユーザーは、5分に1度の割合でTeamsのチャットに対応している。

マイクロソフト社は、こうした結果が驚くべきものであると伝え、「(今回の結果は)労働強化が進んでいることを示唆しており、労働者への期待値も急激に高まっていることが伺われる」と述べています。私もまったく同感で、このような状況下では、多くの人たちの頭に転職の選択肢がよぎるのも無理はない、と考えます。

この1年半の間、私たちの仕事が継続し、経済や社会が完全な破綻から免れたのは、テクノロジーの貢献が大きかったからです。想像してみて下さい。もし、コロナ禍の発生が数年枚だったら。当時は、高速インターネットやスマートフォン、キャッシュレス決済、TeamsやZoomのようなオンラインツール、Netflixのようなサービスは、今ほど充実していませんでした。さらに、もしこれが20年前であったら、私たちは仕事を続けることが出来たでしょうか。これらを考えると、テクノロジーは私たちの救世主とも言うべき存在です。しかし、そのテクノロジーによって、私たちの仕事とプライベートの境界は曖昧になり、消耗感や疲労感も極限に達しようとしているのです。

5. キャリアを再構築したいと考えている

人は皆、自分が進歩し、成長と成功に向かって歩んでいることを実感したいと考えています。 進歩を感じたいと願うのは、人間が本能的に持っている欲求の一つですが、多くの人たちはこの欲求を長い間充足することが出来ませんでした。

多くの人たちは、自分の成長を後回しにして、会社のビジネス継続のために精一杯働いてきました。スキルアップについても、明日から、来月から、来年から、と先延ばししてきたのです。

しかし、こうした姿勢も変化しつつあります。多くの労働者たちは今、キャリアアップの再開に向けて動き出そうとしています。リサーチ企業Axiosの調査によると、優秀な社員ほど、現在の仕事でキャリアアップが出来るかを心配しており、75%の回答者がコロナ禍を契機に、自分のスキルに不安を感じるようになった、と答えています。

そして、残念なことに、多くの回答者は、自分のレベルを引き上げ、目標を達成するためには転職しか選択肢がない、と考えています。企業が向き合い、対処すべき問題はまさにここです。こうした転職は、対応次第で防ぐことが出来るからです。ご存じの通りキャリアップは、企業に対する社員のエンゲージメントを引き出すために非常に重要な要素です。これを無視すれば、キャリアップを望む社員は他社へ転職し、その企業で大きく貢献するでしょう。そして、残った社員は、期待するほどあなたの成功に力を貸してはくれないものです。

6. 経済的な理由で転職を検討

コロナ禍でも仕事を続けることが出来た人たちは、おそらく貯蓄額も増加しています。通勤代もかからず、仕事帰りの飲み会や食事会、ランチの外出もなくなり、貯蓄に回すお金が増えたと思われるからです。金銭的に余裕が出来たことで、次の仕事が決まらないまま転居や転職に踏み切ろうとする人たちも少なくありません。多くの人たちが、経済的な余裕から、自分にマッチしたキャリアへの転換を考え始めました。

また、OpenWorkなど口コミサイトが普及したおかげで、自分のスキルや経験でどの程度の報酬を稼ぐことが出来るのかが、誰にでも分かるようになりました。テック業界やライフサイエンス業界経験者などは、転職後に15%から20%の昇給も夢ではありません。こうした昇給が実現すれば、経済的な余裕は格段に広がります。こうした環境の変化も、転職を後押しする大きな要因となっているのでしょう。

7. 自分がやりたい仕事ではないと気付いた

オフィスでは、楽しく気分転換することも、仲間たちと交流することも出来ました。しかし、リモートワークでは、自分の仕事だけに向き合わなければなりません。実は一日の多くを費やしていた周囲との交流や気晴らしがなくなり、仕事だけに取り組む日々が続く中で、多くの人たちは仕事を心から楽しんでいなかったことに気付くようになります。そして現実を目の当たりにした彼らは、自分の仕事を見つめ直すようになるのです。

チャットツールを使って交流していても、チームや上司、会社から切り離されている感覚を持つ人たちは少なくありません。人事系ソフトウェアを提供しているBambooHR社の人事部門長を務めるキャシー・ホワイトロック氏は、「多くの人たちが、職場との連帯感を喪失しています」と語ります。「上司とコミュニケーションする時間を確保しても、その内容は浅く、質も低下しています。これでは、本来の意味で繋がっているとは言えません。部下たちは、自分がマネジメントされていない、評価もされていない、と感じているのです」。

これを背景に、昨今では独立に踏み切る人の数が急増しています。2020年半ば以降、企業設立の申請ペースは過去最高を記録し、また、コロナ禍で副業を開始する人の数も増加基調にあることが全米経済研究所の調査で明らかになりました。「Work Trend Index」レポートでは、キャリアの大幅な転換や軌道修正を検討している、と答えた回答者の割合が46%に達し、この傾向を裏付けました。

この記事は、 LinkedInに掲載したものを再掲しています。

 

アリスター・コックス

チーフ・エグゼクティブ

アリスターは2007年9月よりヘイズ社のCEOに就任。1982年に英国サルフォード大学で航空技術者の訓練を受けた後、ブリティッシュ・エアロスペース社の軍用機部門でキャリアを始めた。1983年から1988年までは、シュランバーゼー社に勤務し、ヨーロッパと北米の石油・ガス産業の現場や研究職を数多く担当しました。1991年にカリフォルニア州スタンフォード大学でMBA(経営学修士号)を取得し、マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとして英国に戻りました。マッキンゼー・アンド・カンパニーでは、エネルギー、消費財、製造業を含む多くの分野を担当をされました。

1994年にブルーサークル・インダストリーズに移り、グループ戦略ディレクターとしてグループの戦略計画と国際投資のあらゆる側面を担当した。所属中、ブルーサークルは多くの新しい市場で重量物建築資材に事業を集中させ、1998年にはマレーシアのクアラルンプールを拠点とするブルーサークルのアジア事業を担当するリージョナル・ディレクターに就任しました。マレーシア、シンガポール、フィリピン、インドネシア、ベトナムの事業を担当しました。2001年にラファージュがブルーサークルを買収した後は、アジア地域のリージョナル・プレジデントとしてラファージュのアジア地域の事業を担当。

2002年、アリスターは英国を拠点とするITサービスおよびバックオフィス処理会社XansaのCEOとして英国に戻りました。5年間の在職中に組織を再編成し、官民を問わずバックオフィスサービスを提供する英国を代表するプロバイダーに育て上げ、インドを拠点に6,000人以上の従業員を擁する業界最強のオフショア事業を構築しました。

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