Inside Story of ITコントラクター
人材不足の更なる深刻化により、IT分野における非正規採用が活発化

日本におけるハイスキル人材の不足は危機的な状況にあります。

ヘイズが毎年、オックスフォードエコノミクスと共同で調査研究している「ヘイズ・グローバル・スキル・インデックス」の最新版によると、日本の「人材ミスマッチ(Talent Mismatch)」は世界33カ国中最も深刻なスコアを記録しています。Nikkei Asian Reviewは2019年1月、日本で経済が成長せず、女性と高齢者の就職難が続いた場合、2040年までに労働人口の5分の1が減少する見込みであると伝えています。

一方、ヘイズが毎年発表している「ヘイズアジア給与ガイド2019年」で、日本の回答結果を見ると、今年1年間は好景気が続くと予想し、当面の間は社員の増員を見込んでいると回答した企業が半数を超えました。また、企業の多くが事業の成長に不可欠なスキルを持つ人材の採用について、決して楽観視していないことも明らかになりました。理由のひとつとしてあげられるのが、国内の求職者数が前年同期比で10%減少したことです。労働力の問題を解決し、正社員の採用市場では発掘できないスキル人材を補填するために、企業が派遣社員や非正規社員の採用に移行する傾向が一段と強くなっています。

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しかしながら、日本では、非正規社員として働くことについてネガティブなイメージが根強く残っています。派遣契約による低賃金の事務職やサービス産業やコールセンターのスタッフなどは、享受できる権利も限られ立場を軽んじられることも少なくありません。こうした中、これらの既成概念をよそに、トップのハイスキル人材がキャリアパスとして非正規での就業を選択し、正社員では充足できないスキル不足に対応する傾向が強くなってきました。これはIT分野の非正規就業の明確なトレンドとなっています。

IT分野では非正規社員で充足しなければならないポジションが多岐にわたります。企業は、正社員の採用では必要なスキルを持つ人材を確保することができないことに気付き始めています。日本企業の人事異動は、一般的に部門間にまたがって行われます。こうした企業文化がスキル人材の不足を招いている一因でもあるのです。所属企業について深く理解することに多くの利点があることは確かです。しかし、特定の高度なスキルが必要とされる場合には、自社で育成したジェネラリストでは対応できないことに企業は気付きつつあるのです。

チェンジマネジメント、プロジェクト分析、プロジェクトリエンジニアリング、技術監査、技術ガバナンス、開発、ネットワークインフラストラクチャー、ネットワークリエンジニアリング分野の非正規社員に強い需要

IT分野の非正規市場で高い需要が見られるのは、主にビジネスアナリストやプロジェクトリエンジニアリング・スペシャリストといった、チェンジマネジメントに関するものです。また、関連技術が比較的新しいことから、技術監査や技術ガバナンス職の人材については、開発、ネットワークインフラストラクチャー、ネットワークエンジニアリング分野でのニーズが強くあります。最近は金融サービス分野のM&Aが活発であり、IT活用水準も高いことから、こうした分野での経験を持つ人材に需要が集まっています。

日本のIT産業には世界的な注目が集まっています。これを追い風に多くの国際企業が日本での事業展開を進めており、ヘイズ・ジャパンもこうした企業で必要とされる人材の紹介に取り組んでいます。企業がIT分野の非正規雇用を進めるにあたり、求職者に強く求めているスキルのひとつが英語力です。日本は長い間他国に比べて英語力が「低い」とされていることから、こうした人材の確保は企業にとっての課題となっています。

国内のITスキル人材不足を受け、企業の多くは海外からの人材獲得を一段と積極的に検討し始めています。特に海外在住経験を持つ日本人は、国際的な環境での経験を有しながらも日本の文化や言語に対する造詣が深くバランスが取れた人材であることから、企業の高い採用意欲が伺われます。ヘイズではグローバルリンク部門を通じて世界中のネットワークを活用し、日本人の技術人材を探し出し、日本での就業を斡旋しています。こうした人材は通常二ヶ国語が堪能なことから、より魅力的な人材でもあります。

非正規社員の効率的な活用に障害となるのは官僚的な企業文化。
企業は採用プロセスの迅速化を

前述の給与ガイドによると、日本企業の10社に9社(92パーセント)が何らかの形で非正規社員の活用に踏み切っており、4分の1が非正規社員の活用を今後増加させると回答しています。

しかし、非正規社員の増員意欲は拡大しているものの、採用効率は依然として低いままです。非正規市場が成熟している西側諸国では、数日で採用決定に至ります。一方、日本で非正規社員の採用を成約させるまでには非常に長い期間が必要となり、プロジェクトの質に大きく影響がでる場合があります。これはとりわけIT関連のプロジェクトに顕著です。

日本の企業文化には官僚的で煩雑な性向があり、緊急プロジェクトに必要な熟練IT非正規社員の確保に著しい障害となっています。採用担当者は、面接時の経歴評価にあたり非正規社員にも正社員同様に長い時間をかけることがあります。ITを取り巻く環境は常に進化を遂げています。意思決定の前に新しい技術が出現する可能性もあり、非正規職に求める技術を改めて見直す必要が生じることもあるのです。

例えば、企業側は当初Javaに詳しい人材を求めていたのに、ITの性質が変化し、3ヶ月後にはPythonのスキルを持つ人材が必要となっている場合もあります。こうなると採用前提条件が変化してしまい、採用プロセス全体を最初からやり直す必要が生じてしまうののです。

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上記の理由から、企業側は非正規社員の採用プロセスを迅速化しなければなりません。非正規採用の本質は即戦力の採用です。特にIT分野において、企業は変化に対応しなければ競争に遅れるリスクにさらされます。

非正規職はミッドキャリア層の転身や新分野へ切替えを希望する人材にメリット

求められるスキルや対応力を持つ人材にとって、IT分野の非正規ポジションには多くのメリットがあります。求職者が非正規社員として就業する理由は、主にミッドキャリアでの転身を図るため、または新しい分野での経験を積むためであると考えられます。また、非正規職のポジションで、求職者が柔軟に自分の不足スキルに対応できるのであれば、その求人条件に完全にマッチすることまでは求められていないケースが多数です。その代わり製品知識と共に新しいスキルを習得し、開発する機会を与えています。

何らかの理由で正社員を辞めて求職活動を再開した求職者や、キャリアの一環として非正規職を選択し柔軟な働き方とワークライフバランスを大切にしている求職者にとっては、このモデルが適しているのかもしれません。

今後の展望

非正規雇用に対する考え方は、求職者、企業側の双方において改善しつつあり、両者にとってメリットのある状況になるでしょう。日本でのハイスキル人材不足が今後も拡大し、IT分野での非正規市場拡大が持続した場合、ハイスキル人材を中心とした非正規人材は、深刻なハイスキル人材不足という問題へのソリューションとなる可能性があります。