インサイドストーリー:日本のライフサイエンス業界の現状

インサイドストーリー:日本のライフサイエンス業界の現状

市場概況

日本のライフサイエンス業界は、政府主導の取り組みの強化や、大手企業、スタートアップ企業の事業拡大など明るい材料が多く、引き続き成長が見込まれます。

税優遇措置の拡大から規制緩和まで、日本政府は、医療機器、バイオテクノロジー、医薬品分野に海外からの投資誘致に全力で取り組み、日本でビジネスを行うことに対するマイナスイメージの払拭に努めています。

ライフサイエンス企業にとっても世界最速で高齢化が進む日本のマーケットは、市場の潜在的な可能性を探り、そこから学ぶことができる最適な環境となっています。

過去12ヵ月において、製薬、バイオ製薬、メドテック(メディカル・テクノロジー)分野は目覚ましい成長を遂げており、また腫瘍学も近年多くの成果をあげており、成長分野となっています。

高いスキルを持つ人材の需要増加

ライフサイエンス業界における人材不足の状況は続いており、需要の高いスキルを有する求職者、特にバイリンガル人材にとっては、2019年は有利な状況となるでしょう。日本は、昨年最も大規模な採用活動を展開した多国籍企業の拡大を歓迎しており、バイリンガル人材への採用評価もかなり高い状態となっています。

医薬品および医療機器企業は楽観的な事業見通しを示しており、それに応じて採用活動も活発化しました。注目すべき点は、従来通り医薬品販売に需要がある一方で、メディカル・アフェアーズおよびメディカル・リエゾン部門の設置に取り組む企業がより一層増えてきている点です。

医療費負担軽減のために日本政府が近年実施した薬価制度改革を受け、市場価格評価という新しい分野の人材需要が急激に高まっています。企業が改定された薬価制度の動向を注視していた2018年の状況と打って変わり、今年は市場価格評価の専門知識に対するニーズが高まるでしょう。

人材不足に対応するために、概して現地の人材を採用する傾向にある日本のライフサイエンス企業は、企業成長の促進力として外国語が堪能で、かつ日本特有のビジネス文化およびニュアンスの違いに通じている日本人の求職者を採用したいと考えており、海外経験を有する日本人の人材を惹きつける取り組みにより一層力を入れています。

企業は、海外にいる日本人の人材に目を向けながらも、経験の浅い現地の人材を採用して社内外の人材育成プログラムによってスキルアップさせることにも取り組んでいます。

海外拠点をもつ企業は、即戦力となる人材が必要なポジションについて、日本オフィスの空席のポジションを埋めるために、内部での人事異動で調整している場合があり、これは海外から新たな人材を受け入れるよりも好まれる傾向にあります。この傾向は、ライフサイエンス分野で需要の高い人材が大幅な給与アップや手厚い就業条件の提示を期待できる一方で、企業が駐在員手当を支給しないという傾向と一致しています。

日本のライフサイエンス企業の採用動向

企業は総体的にライフサイエンスをキャリアと考えて推進してはいませんが、優秀な人材を惹きつけるために積極的に各企業独自の価値提案を行っています。

ライフサイエンス企業は、給与アップに加え、他社よりも優位に立つために経済面以外のインセンティブも提供しています。一般的なものでは、フレックスタイム制、在宅勤務制度、早期退職制度の導入などが挙げられます。

また別の傾向として、管理職や勤続年数5年以上の従業員に海外体験の機会を提供する企業が増えており、特に多国籍企業にその傾向が見られます。多くの場合、アジアやグローバルオフィスでの研修という形がとられています。

企業は、可能な限り最適な人材を確保するための積極的な採用戦略の一環として、求人フェアへの参加、大学との連携、社内の人材獲得部門の立ち上げに取り組んでいます。また、通常社内部門による採用がより難しい、高い専門性や高度な技術を有した人材の確保については、プロフェッショナル人材紹介企業に大きく頼っています。

日本のライフサイエンス人材の動向

ライフサイエンス業界の求職者、特に人材が不足しているニッチ分野の求職者は、自身の市場価値を認識し始めており、この状況を自身に有利な展開となるように利用し始めています。

ライフサイエンス人材は依然、その大多数が転職に極めて消極的な状況であり、自分の市場価値に見合った報酬を得るために、給与についての交渉や、希望している報酬を提示する可能性のある他社への転職活動に取り組む野心的なプロフェッショナルは少数派です。その結果、売り手市場で、人材獲得競争はかなり厳しい状況となっています。

一方、日本のライフサイエンス人材はこれまでの実績に安住するのではなく、プロフェッショナルとしての能力向上により重点を置き、MBAやMPHの取得に取り組んでいます。時間と財源が限られていれば、雇用適性の向上のためにオンラインでのMBA取得を選択する場合もあります。

商業部門において、2019年の理想的な人材として企業が挙げているのは、バイリンガルで優れたビジネス感覚を持ち、現地での業界実務経験が豊富な現地の求職者です。