インサイドストーリー保険業界編

The Inside Story of Insurance in Japan

 

保険業界はより保守的な業界の一つと考えられていますが、世界的にその様相は一変しつつあります。新たなテクノロジーの進化によって出現したさまざまなInsurTech(インシュアテック)により、業界に革命が起ころうとしています。このことは特にセールス部門において顕著であり、InsurTechは保険会社のセールス部門と消費者との関わり方に変革をもたらしています。

 

そうしたテクノロジーの一つが「レモネード」というアプリケーションです。人工知能(AI)とチャットボットを利用したこのアプリケーションでは、1分未満で保険を販売し、請求された保険金を3秒以内に支払うことが可能です。その他の傑出した例としては、AXAが提供する航空機遅延保険の完全自動次世代プラットフォーム「フィジー」が挙げられます。AXAはこれにより、ブロックチェーン・テクノロジーを用いた商品を提供する初の大手保険グループとなったことを宣言しています。

こうしたテクノロジーは西洋諸国の多くではすでに導入されているものの、日本の保険業界はInsurTechブームに出遅れた感があります。しかし日本ではブロックチェーン・テクノロジーに対する適性が高まっており、さらに日本のソフトバンク・グループが中心となってレモネードに1億2,000万米ドルを出資していることを踏まえれば、その遅れはさほど大きいとは言えません。

事実、日本で最初のInsurTechコンテストが開催された後、「オンデマンド」自動車保険を選ぶ消費者は増加し、富士通とフィットビットは健康保険に関するコラボレーションでクラウドベースのデータシステムを導入するなど、日本でもInsurTech業界に活発化の兆しが見えつつあります。InsurTechコンテストの審査員の一人で、第一生命保険営業企画部長を務める北堀貴子氏は次のように話します。「今の(保険)業界に求められているのは、人々の日常生活をより良くするソリューションを提供することです」

一方、日本が技術革命に追いつこうとしている間にも保険業界は成長を続け、特にセールスと保険数理という、常に人材を募集している部門の採用需要が高まっています。

保険業界の生命線であり、牽引役でもあるセールスに関しては、企業は特に改善に熱心であり、とりわけ新年度が始まってから数カ月が経過し、人員数が見直され、賞与を受け取った求職者が転職先を探し始める頃にはなおさらそうした傾向が高まると言えます。

セールス部門とアクチュアリー部門を拡充したいと考える企業にとって残念なことに、新卒者は保険業界に背を向け、求職者プールはますます小さくなりつつあります。保険関連の分野または保険数理を学んだ人でない限り、こうした若い世代の間では、保険というキャリアパスが不人気であることに変わりありません。保険数理を学んだ人々は、商品からリスク、財務に至るまで業界の幅広いポジションで必要とされていますが、要件を満たす人材は少なすぎるというのが実情です。

その代わり、増員を希望する企業は、他分野のセールス・プロフェッショナルに目を向けつつあります。しかし、入社希望者をいずれから調達するにせよ、企業は、市場にはより近代的な要望を持った新種の若い求職者が存在することを認識し始めています。

重要なトレンドの一つが、英語を使った仕事をしたいと希望する求職者の増加です。そうした希望を持つ、特に30歳未満の人々は、よりグローバルな環境に身を置け、海外に派遣される可能性の高い多国籍企業(MNC)を志望する傾向にあります。企業は消費者だけでなく、潜在的な求職者にもアピールするコマーシャルを打ち出すことによってこうした傾向を活用しようとしており、AIGが「タックル・ザ・リスク」キャンペーンにニュージーランド・ラグビー代表チームのオール・ブラックスを採用したことはその際立った例です。

もう一つの顕著な違いはスキルアップに対する意欲です。戦略・事業開発分野におけるジュニアレベルの求職者の間では、デジタル・テクノロジーやAIテクノロジーによって日本の保険がどう変わるかをさらに学びたいという声がますます聞かれるようになってきています。

しかしおそらく、こうしたジュニアレベルの求職者の間に見られる最大のトレンドは、ワークライフバランスを改善したいという要望であり、その点において最も高い評判を得ている企業に求職者が集まっています。

どの企業を避けるべきかを知りたいという求職者から、ハードな労働慣行や勤務時間の長さで悪評高い企業の「ブラックリスト」について尋ねられることは少なくありませんが、「ホワイトリスト」に掲載されている企業については逆のことが言えます。ワークライフバランスや従業員の幸福を重視する姿勢によって高い評価を得ているこれらの企業は、人材を引きつける力がより強いと言えます。

多くの保険会社がこのリストに名を連ねているという事実は、おそらく従業員、特に育児休業を取得した女性の労働環境改善に成功していることを表していると言ってよいでしょう。損害保険ジャパン日本興亜が従業員を休職前と同様のポジションに復帰させ、第一生命保険が再雇用期間を10年から15年に延長し、明治安田生命保険がキャリア組従業員の所要勤続年数を10年以内から7年以内に短縮したように、保険会社は方針を変更し、ジェンダーダイバーシティ運動の先頭に立っています。

こうした努力が功を奏し、一部の企業は働く母親の復職率を最大95%まで引き上げることに成功しており、保険会社のCEOは働く女性や女性のエンパワーメントに関する委員会で基調講演を求められる機会が増えつつあります。しかし日本の多くの業界がそうであるように、企業が2020年までに女性管理職の割合を30%に引き上げるという目標を達成するためには、一段の取り組みが必要です。

勤務条件を改善したいと考える求職者にとって、企業がセールス部門とアクチュアリー部門の人員増強を模索している今は良いタイミングであり、中でも求人が多い分野の人材は、豊富な選択肢の中から選ぶことができるでしょう。

不人気業種であるにもかかわらず、キャリアとしての保険業界の魅力が高まっているのはこうしたことが要因です。給与は銀行業界ほど魅力的ではないかもしれませんが、その差はそれほど大きくないはずです。さらに、ワークライフバランスを取りやすく、それほどアグレッシブでない雰囲気の保険業界は、ライフスタイルと健康状態を改善したいと考える中間レベルからシニアレベルの求職者にとって、魅力的な選択肢と言えるでしょう。

また、セールス部門やアクチュアリー部門におけるジュニアレベルの求職者に関しては、テクノロジーの進化について知識を高めたいとの希望の持ち主や、世界的に事業を展開する多国籍企業で成功を収められるだけの多言語スキルの持ち主であれば、キャリアの見通しは非常に明るいと言えます。

本レポートについてより詳しくお知りになりたい場合、または求職もしくは採用についてご相談になりたい場合は、ヘイズ・ジャパン シニアコンサルタントの魚住 衣利那(Erina.Uozumi@hays.co.jp)まで電子メールでお問い合わせください。