インサイドストーリー:日本におけるサプライチェーン業界の現状

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大統領の職に就いて間もないドナルド・トランプがアメリカを環太平洋パートナーシップ(TPP)協定から脱退させた時、残されたメンバー諸国は平静を装ってTPPを存続させようとしましたが、日本国内ではアメリカ抜きのTPPは崩壊するとの見方が主流でした。サービスと商品両方の取引量が増加するだろうと期待を膨らませていた日本のサプライチェーンにとって、アメリカの脱退は深刻な打撃となりました。

このような失望の中にありながら日本は、現在年間で580億ユーロに相当する商品と280億ユーロに相当するサービスの対日輸出額をさらに拡大する策として「かつて手厚い保護下にあった国内市場」の門戸を欧州に対して大きく開き、12月にEUとの新たな経済連携協定を取りまとめた、とウォール・ストリート・ジャーナルは伝えています。

今後、取引の増加が見込まれ、日本が今なおTPPの発行を目論む中、国内サプライチェーンには、予想される商品・サービスの活況が業界の成長だけでなく発展をももたらすとの期待が再び高まっています。日本のサプライチェーン業界は是が非でも発展する必要があるのです。

FM グローバル・レジリエンス・インデックスによると、日本のサプライチェーンは災害対応の側面でスイスとオーストリアに次ぐ高水準にあるという強みを持っています。その一方、日本のサプライチェーンの弱みとしては企業や社員の体質が受け身であるという点が挙げられ、積極性や発展性の面では、アメリカやイギリス等の諸外国に比べて大幅に遅れているとの指摘があります。

サプライチェーンは単なる業務システムではなく、売上推進のための戦略的要因かつパートナーであるとの考えに、国際サプライチェーンコミュニティが気付き始めて5年近くが経ちました。

これまで障害除去やトラブル処理を重視してきた日本は、今ようやくこの考え方に辿り着こうとしている段階です。テクノロジーやプロセス面で日本は5年遅れているとはいえ、この動きはプラスと言えます。

EUとの経済連携による成長が見込める中、日本企業はこの機運をどう利用するか検討している段階で、サプライチェーン機能をコストセンターという位置づけからセールス・イネーブルメントの重要パートナーとして見直そうとしています。その結果「需要予測担当者」への候補者ニーズが高まっています。

データ分析のスキルと共に、確固たる信念に基づく直感も求められる需要予測のポジションは、在庫の最適化、データ統合、販売・営業との連絡調整を通じてサプライチェーンと業務部門間の連携機能を提供する上で、重要な役割であるとみられています。日本ではまだ新しい役割であることから、この1年は最も需要の高い状態が続きました。需要予測の候補者不足は向こう1年は続く見通しです。

人材が不足していない分野はプロジェクト部門です。かつては受け身の業務運営で力を発揮していたものの、営業部門とのやり取りの経験が乏しく、商業的な発想の醸成を求められてこなかった人材がプロジェクト部門に多数存在します。ですが、こうした人材の多くは、サプライチェーンを十分に理解分析スキルも持っています。

市場における深刻な「需要予測担当者」不足を認識している企業は、積極性を打ち出す意欲やサプライチェーンの販売・営業に関する知識を持つ人材を中心として、見込みのある候補者に注目しています。

候補者自身による成長努力を期待するのと同時に、一部の企業では社内で人材育成や候補者層を拡大する様々な方策を模索しています。特にサプライチェーンの最先端業界である製薬会社や消費財メーカーでは、その傾向が顕著に見受けられます。

一部の大企業では、サプライチェーン部門に特化したスペシャリスト養成トレーニング制度を整備するようになりました。購入・ロジスティクス・企画の3部門でローテーションを組む3か年プログラムがその典型例で、こうした制度を通じて、日本のビジネス業界に多く見られるゼネラリストとは異なるサプライチェーンのスペシャリストの育成が期待されています。また、必要なスキルを身に着けたスペシャリストを海外に派遣し、革新的な考え方を習得させ、日本に持ち帰って導入させることもあります。

すべての企業がこのような取り組みを行っているわけではありませんが、今後こうした傾向は強まると思われます。その他にも、主に海外に拠点を置く企業を中心に、本部からサプライチェーンの専門家を日本に派遣し、プロセス改善を目的とした国内スタッフ向けのトレーニングを実施している企業もあります。

日本企業にとって、業務部門の中心はカスタマーサービスであり、最も重要視されるのがお客様に対する態度です。ホスピタリティに対する日本独特のアプローチである「おもてなし」は、日本ビジネスに深く浸透した考え方です。アメリカン・エクスプレス・インターナショナルの調査結果によると、日本人回答者の56%が、一回でも顧客対応で嫌な思いをしたら別の企業に乗り換えると答えています。

サプライチェーンが販売の領域に食い込んでくるにつれ、大きな課題となっている「ラストワンマイル」に対する企業の関心が高まっているという点を忘れてはなりません。大手宅配業者がオンライン取引ブームの対応に苦慮する中で、サプライチェーン関連企業は国内最大規模のeコマースサプライヤーであるAmazonや楽天のユーザーを取り込もうと、コストを抑制しつつ様々なサービス改善策を検討しています。

来る経済連携の結果、連携国と関係がありサプライチェーン部門を有する企業では、英語を話す人材がさらに必要となってきます。英語のスキル、国際経験、分析スキル、新しい技術を取り入れた革新的システムを受け入れる能力を持つ人材は、より良い条件のポジション獲得が期待できます。

仕事環境で英語を使いたいと考える候補者の多くが外国企業に注目していますが、実際にほとんどのチャンスが転がっているのは国内企業です。日本にグローバル本部を置く企業では、今後、海外支店とのやり取りが増える見通しで、そのカギとなるのが英語を話す候補者の採用です。

日本企業が従来の受け身的姿勢をやめ、販売部門としてのサプライチェーンに舵を切ることの必要性の認識を高め、国際間取引が増加すれば大きな収益が期待できます。しかし、そのためにはトレーニングや育成を行い、見通しを立てて、プラクティスだけでなく候補者層の拡充にも取り組む必要があります。

日本の企業では人材不足が深刻化していますが、一方で候補者は、成長、収入アップ、キャリアアップを求め、より積極的に企業にアプローチしています。

これからの国際的イノベーションが、日本のサプライチェーンにおけるおもてなし精神を補完する役割を果たすことに企業が気づき、また候補者に歩み寄ることができるならば、日本のサプライチェーンは海外の競合他社に追いつくことができるかもしれません。

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ヘイズ・ジャパン サプライチェーン採用マネージャー YuChin Tu  YuChin.Tu@hays.co.jp