インサイドストーリー:日本におけるライフサイエンス業界の現状

Two men in laboratory smiling and taking sample

 
ライフサイエンス業界についてある程度の知識がある方なら、ここ数年相次いでいる製薬業界のビッグネームが関与した不祥事をご存じでしょう。これらの問題によって、ライフサイエンスのプロフェッショナルらの間で、大手製薬会社に対する信頼は確実に損なわれつつあります。 

保守的な日本のライフサイエンス業界ではその影響は続いています。医師やキーオピニオンリーダー(KOL)は事件を記憶しており、もはや製薬会社の言葉も、ひいてはその新製品も信用できないと感じ、新しい治療に背を向けて実証済みの信頼できる治療法に依存し続けています。

日本でこうした既存薬への依存を定着させているもう一つの要因は、政府のジェネリック医薬品に対する姿勢です。高齢化に伴い医療費の抑制が必要となり、ジェネリック医薬品市場のコストメリットが繰り返し主張され、2020年までにジェネリック医薬品の割合を80%に押し上げることを期待する向きもあります。具体的な数値目標は安倍内閣が閣議決定した骨太方針2017では削除されたものの、一時的な休止にすぎず、予算削減のため医療機関の診療報酬2.5%引き下げが提案されるなど、政府は再びこの件に関心を高めるのではないかと、引き続き業界では懸念しています。

このような状況から、製薬会社は、革新的で高額な治療法で収益をあげる新たな方法を模索しています。

失われた信頼を回復するため、製薬会社は過去12カ月、従来式の営業アプローチを控えるとともに、新しい治療の効果を同業者の目線でKOLに説明できる、信頼性・信用面で申し分のない医療プロフェッショナルを採用し始めています。

このような動きによって、45歳以下で製薬業界の商業部門に転職する意思のある医師、研究者、看護師に対する需要が大幅に高まっています。求職者はこの機会を、より多くの患者に影響を与えることができる職種に就き、自己のワークライフバランスを向上し、報酬アップを図ることのできるチャンスと捉えています。

日本のライフサイエンス市場におけるもう一つの重要な成長分野は、ミドルマネジメントです。ジュニアレベルには多くの若手求職者が入ってきており、また、シニアレベルの社員は定年後も現在の給与水準で契約を延長するよう促されていますが、中間の職務を担う人材が不足しています。

これらはすべて、上記の分野で人材市場が極めて不安定であることを意味していますが、興味深いことに、求職者はこの状況を利用することに対し消極的です。

日本の「終身雇用」の考え方は徐々に薄れていますが、求職者の間にはいまだに転職は会社への忠誠心不足の表れだとする見方があります。これは同僚の圧力によってさらに増幅されます。これまでの事例証拠からも、求職者は同年代の意見を大変重くみており、その会社に対して同僚が躊躇するような徴候を見せると、転職をしない可能性が高いことがわかっています。

変化に対する恐れはあるものの、同僚の懸念を押しのける意欲のある求職者は、莫大な報酬を得ることができるかもしれません。求職者不足のこの市場では、人材コンサルタントが給与交渉で抵抗にあうことはめったになく、企業は素早く人材確保に動くため、35~50%の報酬アップも珍しいことではありません。企業は望む人材を見つけると、とても断れないようなオファーを出します。

企業は人材獲得には積極的ですが、市場は人材不足で厳しい状況であるにもかかわらず、求職者に対する要件に全く柔軟性をもたないことが難点です。企業は一度決めた要件を頑なに守り、条件に1つでも外れると(年齢が1歳高い、必要な経験はあるが実務ではなく研究職だったなど)、適性が高く優れた将来性を有する候補者であっても即座に断る傾向にあります。企業が状況の改善を望むなら、このような姿勢を変える必要があります。

また、製薬会社は市場拡大のため日本国外にも目を向けています。最近の業界におけるグローバル化の動きにより、日本では新薬が米国とほぼ同時に発売されるようになり、企業は次第にバイリンガル求職者への関心を高めています。これにはネイティブレベルの日本語を話す外国人も含まれますが、企業は帰国子女やネイティブレベルの外国語を話す日本人を選ぶ傾向にあります。その方が保守的なKOLの信頼を得やすいからです。

日本のライフサイエンス業界には何かが起ころうとしている、おそらく危機に瀕しており、今が頂点だとの感覚があります。次の不祥事や法令による制約など、何かがきっかけとなり大きく傾く可能性もあれば、信頼の回復や政策の緩和などの好要因によって浮上する可能性もあります。一方、求職者、特に医療プロフェッショナルやミドルマネジメントにとっては、これは前進するだけでなく違いを生むことができる素晴らしい状況です。

日本のライフサイエンス業界の動向、求職もしくは求人についてのお問い合わせは、ヘイズ・ジャパン ライフサイエンス担当リクルーティング・マネージャーのMaggie Hakkouまでemail(Maggie.Hakkou@hays.co.jp)でご連絡ください。