インサイドストーリー:日本における銀行・金融業界の現状

Compliance Image

2008年に勃発した世界金融危機は、一部では、銀行セクターに対する野放図な規制緩和が招いた結果だと非難する声も聞かれました。それ以来、危機の再来から身を守ろうとする金融業界にとって、規制の遵守は最も重要なテーマとなっています。

世界金融危機以来、リスク・コンプライアンスは銀行の重要な関心事項となり、収益や損失と比較して、世界の銀行が費やす規制対策費用は大幅に増加しています。しかし、日本の銀行による取り組みはあまり進んでいません。一部の著名企業は大規模なコンプライアンス部門を設置しているものの、とりわけ小規模な企業の中には、コンプライアンス部門全体の人数がわずか2~3人という場合もあります。

2017年10月には、金融システムを悪用した犯罪行為への対策が不十分であることへの懸念を背景に金融庁が作成した調査報告書が発表され、日本の地方銀行や信用組合の犯罪防止策に不備があることが明らかになりました。さらに同報告書は、日本の小規模な融資機関の多くではリスク管理が十分に行われておらず、上層部の協力も限定的であると指摘しています。

一見そうは見えないかもしれませんが、だからといって日本の銀行がコンプライアンスに全く無関心というわけではありません。過去24カ月間には、コンプライアンス業務に対する関心が高まり、企業はインフラを堅固なものにするためにコンプライアンス部門の人員を拡充したり、コンプライアンス業務の一部を外注したりしてきました。

銀行が抱えている問題の一つは、従来の規制の一部がむしろ1990年代のポスト・バブル期に相応しいといえるような時代錯誤なものになっているという点です。金融庁は、こうした規制の改正に取り組んできました。

こうした中、銀行がより新しい規制に適応するためには、新たなガバナンス体制を実行するための人員の補充が必要となります。規制当局は現在、コンプライアンス専門家の適性レベルを銀行に伝達し、こうした推奨に従うよう、銀行に圧力をかけている段階です。

◆暗号通貨導入が引き上げる、コンプライアンス専門家の更なる需要
コンプライアンス問題は、日本の銀行業界におけるもう一つのホットなテーマである暗号通貨の導入にも影響を及ぼしています。2017年初めから9月末までの期間中に全世界で実施された新規仮想通貨公開(ICO)による通貨販売額は、2016年通年のほぼ25倍に当たる230億ドルに達し、その飛躍的な拡大から、世界的な話題となっています。

日本は世界で最初に電子ウォレットを導入した国ですが、日本の消費者はあまり決済テクノロジーを利用しないことで知られており、2014年の統計によれば、決済金額の80%以上が現金によるものでした。日本が中国や韓国と同じように暗号通貨を禁止する可能性もなくはありませんでした。

しかし2017年9月、金融庁は、11の暗号通貨取引所の登録を承認しました。この承認後、暗号通貨が円の代わりとなりうるか、または円との併用が可能かどうかについて議論が巻き起こりました。おそらくその中で最も大きな問題は、暗号通貨を誰が、どのように規制するかという点です。

こうして、ただでさえリスク・コンプライアンス体制が不十分な銀行に新たな規制が導入され、さらには新しい通貨システムが採用される可能性があることを理由に、日本の銀行業界は、経験豊富なコンプライアンスの専門家を切実に求めています。ここで問題となるのは、そうした専門家が際立って不足しているということです。

一方、日本の雇用市場は全体的に人手不足の状況にあり、7月の有効求人倍率は1.52倍と、43年ぶりの高水準を記録しました。銀行のコンプライアンス部門に関しては特にこの傾向が著しく、推定求人倍率は3~4倍にのぼり、企業は十分な数の職員を確保することに苦戦しています。

◆コンプライアンス部門は売り手市場
過去を振り返ってみると、日本の求職者にとって、コンプライアンス部門はあまり魅力的な職場とは考えられていませんでした。コンプライアンス部門は長い間、業績にほとんど影響を与えず、報酬が低く、そしておそらくは面白みのない職場とみなされてきたのです。しかし、銀行業界においてコンプライアンスが最優先課題となり、企業がコンプライアンス部門の拡充の必要性を認識する中で、そうした見方は変わりつつあります。

そのため、企業は今や、採用した職員に競争力のある給与を支払うとともに、企業にとって不可欠な部門で働く上での動機を高められるよう、努力しつつあります。

こうしたことから、ジュニア・レベルの求職者だけでなく、スキルと知識をコンプライアンス業務に活かしながらワークライフ・バランスを改善し、収入を増やしたいと考える、トレーディング部門または(最も多いケースとして)オペレーション部門など、金融業界のその他部門で働く人々も、コンプライアンス部門にますます興味を示すようになってきています。

このスキル・シフトによる悪影響の一つは、コンプライアンス部門に移った人員の穴を埋めるため、オペレーション部門についてもより多くの人材が必要になることにあります。この堂々巡りの状況はすなわち、銀行のオペレーション部門もまた企業成長の一つの領域であることを示すものです。

とりわけ、極めて競争の激しいコンプライアンス人材市場の中から適切な人材が見つかった場合、企業は迅速かつ積極的にその人材を確保しようとし、採用プロセスを急ぐ可能性があります。しかし、必ずしも銀行業界全体がそうだというわけではなく、採用プロセスは極度に時間を要するものとなる場合が少なくありません。人材が不足している市場では、企業は非常に慎重に行動する場合があります。適任でない人材を採用し、長期雇用契約を結んでしまうおそれがあるため、拙速な行動は禁物です。企業は早急な対応の必要性を理解しつつ、その危険性も認識しており、こうした状況は両刃の剣といえます。

銀行側が採用に及び腰とはいえ、特にコンプライアンス部門やオペレーション部門で経験を積んだ求職者にとって今は良い時期です。しかし、たとえ自分のスキルが強く求められているとしても、天文学的な額の給与を要求することはできないということを求職者は認識しておく必要があります。市場価値のレンジは職種によって異なり、人材プールの厚み次第では、ある程度の交渉も可能です。しかし求職者がその市場価値以上の待遇を望めば、選考の対象から外れてしまう可能性があるのです。

給与面以外でも、頻繁に報道で取り上げられる「過労死文化」への反省から、最近の社会は労働時間を短縮する方向へと変化してきているほか、従業員を長時間働かせることは離職率の高さにつながるとの認識が企業の間に広がったことで、求職者は、より柔軟な働き方の選択肢を期待できるようになりました。時短勤務、残業時間の制限、そしてとりわけワーキングマザーを対象に、在宅勤務を認める場合があることなどがその例です。

規制当局がこれまで規制遵守が不十分であった企業の取り締まりを行ったことや、新たなテクノロジーの進化を受けて、日本の銀行業界も(時間はかかったかもしれませんが)ようやく規制遵守の必要性を認識し始めたように思われます。その結果、この領域に関する知識を持った求職者にとって、現在はかなりの売り手市場となっています。規制当局への対応経験が豊富で、なおかつ証券会社での勤務経験を持つ求職者への需要は、他のいかなる求職者よりも高いといえるでしょう。

日本の金融業界の動向、求職もしくは求人についてのお問い合わせは、ヘイズ・ジャパン 銀行・金融業界リクルーティング・マネージャーのRonald Mercedes(ronald.mercedes@hays.co.jp)までemailでご連絡ください。